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第4回:家族としてめぐり合ったことにまず感謝

早樫 一男 臨床心理士

虐待の世代間連鎖

携帯電話は今や、コミュニケーションの新しい手段・道具になっています。ところが、この便利な通信機器によって、これまでにない人間関係、新たな問題も生まれているようです。便利さの裏側では、いったい何が……。

子育て相談でのひとコマです。
「就学前の子どもに対してちょっとしたことでつい手が出てしまいます。実は、私自身、親から虐待を受けて育ちました。虐待を受けて育つと、連鎖するって聞いたことがあります。私もそうじゃないかと、不安で……」
お母さんはとても思い詰めた様子です。
「今日は勇気をもってよく相談に来られましたね。児童虐待の中には親自身も幼児期に虐待を受けているケースがあり、『虐待の世代間連鎖』といわれています。世代間連鎖の見られた割合を統計的な数値で公表されることもあります」
「やっぱり、虐待って連鎖するんですね……」
「虐待を繰り返すのではないかと心配されているんですね。確かに、世代間連鎖が見られる事例はあります。しかし、あなたの場合も必ずそうなると決まっているわけではありません。統計的な数値は魔法みたいなもので、そうならない方に目を向けてもいいのですよ」
「じゃあ、私はどうれば?……」
「親から虐待を受けていたということを、ご主人はご存じですか?」
「話したことはありません。夫の小さなころのこともあまり知りませんし……」
「お互いの子ども時代について、夫婦で話してみてはいかがですか? 良かったことやうれしかったことと、つらかったこと悲しかったことの両方を話してみてください。それから、お子さんとは良い関係の時を大切にしてください。もちろん、何か困ったことがあれば、またお越しください」

子育ての不安を強く抱いていると、「虐待の世代間連鎖」という言葉の落とし穴にはまりやすくなります。それを救ってくれるのは、夫婦の意思疎通と協力体制(チームワーク)です。夫婦親子としてめぐり合った不思議さに感謝できれば、未来は変わります。もちろん、周囲から孤立しないよう心がけることも、忘れないように。

いきいき通信2007年4月号掲載