第12回:心を合わせて取り組むことから
早樫 一男

家族力
子どもたちの無気力、ひきこもり、不登校……これら問題の芽は、夫婦や親子の関係、家族のあり方にあるといわれます。家族力、弱くなっていませんか? 家族の絆、確かめてみましょう。
「〝ご家族で何かしているところ〟の絵を描いてください」
親子が揃った相談場面で、このような課題を出すことがあります。最初はクレヨンを選ぶことからです。すぐに手を出す子ども、最後まで手が出ないお父さん、自分が選んだクレヨンを家族に押しつけるお母さん等々、いろいろな家族に出会います。どのように選ぶのかを注意深く見ていると、家族のスタイルが不思議と分かってきます。
各自のクレヨンが決まったら、次の課題は「何を描くか?」です。ここでは、家族のコミュニケーションが浮き彫りになります。話し合いをせずに誰かが勝手にテーマを決め、描き始めるといった家族はよくあります。テーマが決まるのは、まだいいほうかもしれません。それぞれが思い思いに描く家族もあります。バラバラな家族です。子どもが勝手に決めて、親はほとんど描かないという家族もありました。
絵の上手下手の評価が目的ではありません。思いがけなく与えられた課題に対し、家族がどのように取り組むのかが大切なのです。課題や問題を通して家族が心を合わせて取り組むことができれば、それが一番の「家族力」になると言えるでしょう。いざというときにこそ家族がまとまれば、これほど力強いものはありません。
ある相談のケースでは、毎回「家族で描く絵」に取り組みました。最初は子どもに振り回されてバラバラでした。家族のコミュニケーションや親のリーダーシップには弱さが見られました。しかし、回を重ねるごとにまとまった絵になっていきました。子どもたちも楽しそうでした。確かめると、相談日の前日には家族で「何を描くか?」を話し合ったり、話題をつくるために家族で出かけることが多くなったとのことです。
家族は、ちょっとしたきっかけがあれば変化します。家族として向き合う課題や問題は、変化のきっかけとなるものです。さて、あなたの家族は「家族でどのような絵を描きますか?」。
いきいき通信2007年12月号掲載