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第13回:「守られている」感覚を育てよう

早樫 一男 臨床心理士

子ども世界のストレス

近年、深刻な社会問題になっている児童虐待、自殺にもつながるイジメ。親子が向き合い、葛藤していく中で、重要なのは何でしょうか。

「赤ちゃんポスト」が話題になりました。また、児童虐待やイジメをはじめ、子どもたちの世界に渦巻くストレスは相変わらずです。

このような中で、子どもが心理的に健康に発達していくには、何が重要なのでしょうか。発達心理学の世界では、「自分は保護されている」「自分は守られている」という感覚を育てることが重要であるといわれています。虐待やイジメの中に身を置いている子どもたちは、まさにこの感覚を育てることが危うい状況にあるといっていいでしょう。
「守られている」感覚は、日常のさまざまなストレスから防御してくれる目に見えない「安全服」のようなものと言えるかもしれません。「守られている」という感覚は、「温もり」感に通じます。人の温もりがわが身を包んでくれることによって、理屈抜きに心は癒やされるのです。

親からの虐待を長期に受けた場合、悲しいことに、子どもの心は冷え切り、凍り、固まってしまいます。イジメの場合も同じように、心は冷え切ってしまいかねません。

それだけに、家族や友達の中で「守ってくれている」「そばにいてくれる」と感じることができる人の存在は、大きな意味を持つわけです。とりわけ〝親に守られている〟実感はとても大切です。

ところで、「守られている」という感覚を回復できる第一歩は、「分かってもらえている」という感じを持つことだといわれています。そばに寄り添う理解者がとても重要なのです。カウンセリングは相手を分かろうとする作業です。しかし、相手を分かることはカウンセラーだけにしかできないというものではありません。私たちは、お互いに相手を分かる「心」を持っています。その心を相手のために使い、親子・家族・隣人のことを「分かり合う」ようたすけ合いたいものです。さらに言えば、私たちは目に見えない大きなものに「守られて」いるのではないでしょうか?

いきいき通信2008年1月号掲載