第15回:気づいてほしい 子どもの〝役割〟を
早樫 一男

子どもの問題行動には…
子どもの不登校や非行。とかく問題と思われがちな行動の深層には、家庭の中のひずみがあります。どうしてうちの子が……と思う前に、親としてどうだったかを振り返ってみましょう。
小学三年のA子さんは、半年ぐらい前から突然不登校になりました。父方祖父母、両親、兄との六人家族。祖父母との同居はA子さんが生まれたころからです。
家庭での様子はこれまでと変わっていません。朝も普段どおり起き、しかも元気で、家族との会話も普通です。A子さんのことを心配した母親は早速、相談機関を自ら探しだし、毎週、熱心に通い始めました。A子さんを連れて相談に行く母親はとても楽しそうです。中学二年のB君。家族は両親と姉との四人家族。中学に入学してから、急に夜遊びや喫煙、教師への暴力などが始まり、親は学校や警察に呼び出されるようになりました。B君が小さいころから両親はけんかが絶えず、姉とB君は夫婦げんかの仲裁をよくしたといいます。学校や警察に呼び出されるたびに、両親は「この子が悪い。この子の問題さえなければ……」としきりに訴えています。
A子さんやB君にのみ焦点をあてて考えると、「不登校」「非行」という問題を持った子どもとなります。しかし、家族という中にA子さんやB君を置いて考えてみると違った見方ができます。A子さんの問題は、堂々と外出するきっかけを母親に与えています。A子さんの相談での外出は、父方祖父母との同居の息苦しさから抜け出す絶好の機会になっているのです。B君は自らの問題行動を起こすことで、夫婦の葛藤(けんか)が深まらないよう、あるいは、繰り返さないような〝役割〟を果たしています。両親がB君の問題に奔走している間、夫婦げんかは棚上げになるからです。
家族の中に子どもを置いてみると、その子が家族の中で引き受けている(引き受けてしまう)役割が見えるようになります。家族思い、親思いの子であればあるほど、その子なりに考えた行動をとることがあります。子どもの起こす行動を「問題」と決めつける前に、少し違った角度から見直してみませんか?
いきいき通信2008年3月号掲載