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第16回:子どもの心に映る 親の課題

早樫 一男 臨床心理士

団塊世代のお父さん

何かと話題になる団塊世代の退職。ところが退職はしたものの、さてわが家に居場所は? と深刻に悩むお父さんもいます。家庭のあり方そのものがいま、問われているようです。

元銀行員の秋彦さん夫妻が、二男の冬樹君のことで相談にこられました。

冬樹君は希望する大学へ進学後、友達関係がつくれず、三年生の後半から下宿に閉じこもりがちになりました。心配した両親が自宅に連れ帰り、現在に至っています。最近では少しずつ元気になり、アルバイトに行ってみたいと口にするようになってきたとのこと。ちなみに、自宅は二世帯住宅になっており、祖父母が健在です。

夫婦面接でひたすら話すのはお母さんの春子さん。秋彦さんは黙って頷くことが多く、元銀行員というイメージは浮かびません。家庭でも秋彦さんと冬樹君の会話はありません。「父親の方が子どもに気を使っているようです。どのように声を掛けたらいいのか分からないのかもしれません」と春子さん。何を言われても秋彦さんは横で頷いて聞いているだけです。五回目の面接。春子さんの都合が悪くなり、秋彦さんだけの参加です。担当者の予想を裏切り、秋彦さんは自分自身のことを話し始めました。特に話が集中したのは、会話が全くない祖父の夏夫さんとのこと。秋彦さんが大学生のころ、夏夫さんと衝突したことがあり、それ以来、没交渉とか。五年前にリストラされ苦労したことや、再就職した職場の居心地もよくないこと等々、誰にも話せない思いを一気に吐き出すようでした。
「これまでの人生は何だったのか? と考えこむことが多くなりました。きょうは胸にたまっていたものを思い切り聞いてもらいました。すっきりしました」秋彦さんは自分なりに一生懸命人生を通ってこられました。しかし、プライベートにもパブリックにも、安定した人との関係は築けなかったようです。団塊世代のお父さんのなかには、安定した居場所を確保できなかったという、漠然とした不充足感や傷つき感、孤独感を感じている方もあるかもしれません。居場所を模索する冬樹君の課題は、お父さんの課題でもあるようです。

いきいき通信2008年4月号掲載