第18回:暮らしのなかで育む豊かな心
早樫 一男

心が育つ場所
青少年が関わる事件の背景には、命を大切にし、他人を思いやる心の希薄さがあるように思います。いまこそ、「心の問題」を根本から問い直す必要があるのではないでしょうか。
一年の締めくくりの月となりました。あなたにとって、短く感じた一年でしたか? それともとても長く感じましたか? 時間は公平に与えられているものなのに、「短い」とか「長い」といったように感じる心って、とても不思議なものですね。
ところで、今年も「心」や「癒やし」のブームが続きました。複雑な社会状況のなかで、突然、天災や事故、事件といった出来事に巻き込まれるかもしれない、といった不安が背景にあるようです。さらにまた、家族(家庭)・学校、地域・社会が崩壊し、人とのつながりが希薄になっている傾向が拍車をかけているのかもしれません。もし思いもかけない出来事に出合ったら……。「まずは落ち着こう」と自分自身に言い聞かせてください。そして、心の専門家でなくとも、身近な誰かに相談してみることです。お互いの思いを「言葉」にして伝え合いましょう。信頼できる仲間は日ごろから大切にしておきたいものです。本来は、夫婦・家族が何よりも大切な存在であるはずなのですが……。
今年起きたさまざまな出来事を通して、「心は暮らしのなかで育つ」のだなぁとあらためて感じました。さらに言えば、豊かな暮らしのなかで豊かな心が育ちます。そして、暮らしは家族に支えられています。家族の豊かさが心を豊かにするといってよいかもしれません。もちろん、ここでいう豊かさは経済的な豊かさではありません。家族お互いが相手のことを心にかける、毎日の暮らしのなかで「ありがとう」「ごくろうさま」の感謝とねぎらいの言葉をかける、他者の健康を祈る、いまを感謝し喜ぶ等々、暮らしのなかでできる小さな積み重ねが、大きな変化へと繋がっていきます。小さな心遣いが豊かな心を育てていくことに繋がります。
目指すは陽気ぐらしの世界です。今年一年、愛読していただきありがとうございました。
いきいき通信2008年6月号掲載