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前向きに受けとめる力

諸井 理恵 山名幼稚園理事長・園長
天理教山名大教会長夫人


きっかけは「偶然」から

昔から、年の暮れになると窃盗事件が増えるといわれています。それでも、ここ十年くらいの推移を見ると、被害件数は四分の一くらいに減っているようです。防犯カメラなどのセキュリティ対策が進んだおかげかもしれません。
一方、窃盗行為に及んだきっかけはというと、「偶然」が断トツ一位だそうです。実は、私も高校生のとき、その「偶然」がきっかけと思われる窃盗被害に遭いました。

ある休日に、通学定期券を購入するためのお金の入った封筒をバッグに入れ、家を出ようとしたとき、忘れ物を思い出しました。バッグを玄関口に置き、二階に上がって戻ってきたら、現金だけが消えていたのです。
玄関の戸は開いており、庭先からバッグが見える状態でした。なんという間の悪さでしょう。私が二階へ上がっていたわずかな時間に、たまたまわが家を訪れた人による犯行でした。
高校生にとっては、かなりの大金です。盗られたからといって、簡単に親に頼める状況ではありません。

「もー、アッタマにきた!仕方ない、自転車で通ってやる!」
それ以来、十四キロほどの道のりを、片道五十分の自転車通学に切り替えました。髪の毛は焼けてサーファーのように茶色になり、授業中の居眠りは多かったかもしれませんが、自転車通学は苦にすることなく続きました。
文化系の部を二つ掛け持ちしていた私ですが、それに加えて、毎日百分間のロードバイク部にも入っていたようなもの。おかげで心身ともに鍛えられ、元気に過ごせたかもしれません。

以上は、私の不注意も原因としてあった話ですが、人生には、こちらに落ち度がなくても、理不尽なことがたびたび起こります。

神様からのプレゼント

二十代のころ、個人で広告デザイン業をしていたときのことです。印刷の発注を任せていた下請け業者のミスにより、納品がすべてやり直しになりました。私は仕事を頂いた先に平謝り。帰りの電車の中で、涙がぽろぽろ出たことを覚えています。
損失は下請け業者と折半し、十数万円ほどでしたが、起業して一年目の個人事務所としては痛い出費でした。そして、一番がっかりしたのが、信用して手を組んでいた下請け業者が責任を感じていないことでした。

「もー、アッタマにきた!こうなったら、印刷発注業も自分でやる!」
すぐに新しい印刷会社を探し、直接出入りするようにしました。そのおかげで、予想以上に利益も出るようになりましたが、良心的な値段で丁寧な仕事をする印刷会社に巡り会えたことで、気持ちよく仕事ができるのが何よりうれしいことでした。

自分にとってプラスなことが偶然起きると、「神様からのプレゼント!」と思ってしまうのが私たち人間です。逆に、マイナスなことが起きると「ついていない!」と、へこみます。
けれども、偶然のマイナスも、やっぱり〝神様からのプレゼント〟ではないでしょうか。へこんだまま終わらせるのではなく、そこから私たちがどう考え、どう行動するかで、まだ見ぬ素敵な世界を経験することができるのではないかと思います。

私たちがマイナスに思うような出来事も、泰然とした態度で一身に受けて通られたのが、おやさま(天理教教祖・中山みき様)です。すべては親神様が示される通るべき道であると、ただただ受け入れて通られました。
私たちが人生で出合う出来事には、先の楽しみを見せてやりたいという親神様の思いが、きっと込められています。あらがうことなく、ひたすら良き未来を信じて、前向きに受けとめる力こそ、私たちが試されている力かもしれませんね。

いきいき通信2018年9月号掲載