第19回:心を豊かにする 新しいチャレンジを
早樫 一男

お正月の遊び
いまや、5、6歳の子どもの約半数がコンピューターゲームで遊ぶ時代。部屋で一人、ゲーム機で遊ぶより、家族と遊ぶ楽しさ、家族団らんを味わわせてあげたいものです。
「元旦から、家族でトランプやカルタをするようになりまして……楽しいものですね」
一人娘の正子(仮名)の不登校のことで相談に来ている母親は、家族の近況報告を始めました。家族は父親、母親、祖母(母親の母)、小学五年の正子の四人。正子の不登校のきっかけは、クラスメートとの小さなトラブルのようです。ところが母親面接では、娘のこと以上に、夫に対する不満が多く語られました。実は何度か「離婚」を考えたことがあるとのことです。子どもが悩み、解決に困難を感じるような問題を抱えたとき、家族(親)がもめていたり、まとまっていなければ、子どもの心の支えにはなりません。一人娘の正子は、自分の不登校のことよりも、両親の離婚問題のほうに小さな心を悩ませていました。
そうしたなか、お正月を迎えました。そこで、母親に出した課題が「お正月休みの間、家族で何かしてみること」でした。
「最初は渋っていた夫ですが、小さなころの楽しかった思い出がよみがえってきたようで、笑顔でゲームを楽しんでいました」
「父親のにこやかな表情に影響されたのか、正子はイライラしなくなりました。正子のほうから、今日も一緒に遊ぼうと呼びかけてきて、結局、二週間ほど続きました」
「最初はトランプだけだったのですが、おばあちゃんも参加してカルタも始めまして……。わが家ではゲームが続いています」最近の遊びは、室内でのテレビゲームや携帯ゲームなど、コンピューターゲームが主流となりました。一人だけの世界で楽しむというもの。ところが、複数の人間が楽しむゲームは、時間や場所を共有するからこそ、「ともに楽しむ」という喜びを味わうことができます。また、知恵や想像力も必要とされます。家族がともに遊ぶ楽しさ、お正月を機会にもう一度味わってみませんか?
いきいき通信2008年7月号掲載