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第24回:子どもたちに寝食を共にする機会を

早樫 一男 臨床心理士

親離れ子離れ

昔から「可愛い子には旅をさせよ」といわれています。日常とは異なる環境に身を置くとき、子どもたちの心は自ずと成長し、それが生きる力の基礎になるのではないでしょうか。

うららかな春が過ぎ去り、子どもたちにとって楽しみな夏がもうすぐやってきます。夏休みで思い出すのは、不登校の子どもたちとチャレンジした「サイクリング」のことです。スタートからゴールまでの数日間、子どもたちが成長していく姿には目を見張るものがありました。

なんといっても印象的なのは、出発日に集まってくる子どもたちの様子です。どの子にも、とても不安な表情が漂っています。家以外で泊まることが不安な子、食事が不安な子、知らないもの同士で数日間過ごすのが不安な子……等々。集合場所まで付き添ってきたお母さんは、「心配しなくても大丈夫よ!」と優しく声を掛けるのですが、その言葉がより一層、不安をかき立てるようでした。お母さんのほうが実は、子どもより心配なのかもしれません。子どもが親元を離れて数日間過ごすという体験は、親にとっても子ども離れの良い機会なのですが……。

初日は不安な子どもたちも、共に行動し、時間が経つに従い、変わっていきます。一緒に食事をする、風呂に入る、寝るといった基本的な生活を通して、子どもたちはぶつかり合い、学び合い、たすけ合うようになります。仲間意識が芽生え、育っていくのです。子どもの持っている成長力にあらためて敬服することがたびたびでした。最近は、入学後すぐに新入生合宿を実施し、友達をつくる機会を設定している高校や大学も随分あるようです。対人関係がうまく結べない子どもが増えたり、遊ぶことが少なくなったことの反映かもしれません。その是非はともかく、子どもたちに対して、大人ができることは少しでも提供したいものです。

友達関係を学んだり友達づくりの機会として、また子どもが育つ機会として、「寝食を共にする」時間と場所はとても大切なものです。この夏も「こどもおぢばがえり」や「学生生徒修養会(高校の部)」が催されます。子どもたちにとって「輝く夏」になりますように!

いきいき通信2008年12月号掲載