第25回:心を豊かにする 新しいチャレンジを
早樫 一男

行動範囲を広げる
小さいころからいろんな体験をした子どもほど、目標を立てて努力し、チャレンジする勇気が身に付くといわれます。夏休み、お子さんの活動のレパートリーを広げてみませんか。
今年も暑い夏がやってきました。夏にはどんな思い出がありますか?十数年前のある夏休み。小学四年の二男を連れて、琵琶湖半周サイクリングにチャレンジする計画を立てました。自転車を車に積み込み、いざ出発という段階になったとき、小学二年の三男が「付いていく!」と言って譲らず、結局連れて行くことにしました。
湖岸から吹く風は気持ちよく、流れる汗も心地よく感じ、午前中は予定どおり進みました。琵琶湖大橋の登りは大変でしたが、下りの爽快感は格別でした。問題は昼食後の後半でした。暑さと疲れが重なり、こんなはずではなかったと思ったのか、三男が「(ゴールは)まだ?」「いつ着くの?」「疲れた」等の連発状態になったのです。何とかなだめすかしながら出発地点に戻ったとき、三男はもちろんのこと、親以上にホッとしたのは何かとフォローしていた二男かもしれません。
この計画のきっかけは、当時、不登校の子どもたちと取り組んでいた琵琶湖一周サイクリングです。一週間の日程のなかで変化する子どもたちの様子を見て、いずれはわが子と一緒にと考えていたのです。ところで、自転車といえば父のことを思い出します。最初は中古のものを父が修理し、ペンキを塗り直したものでした。自転車に乗れるようになるまで、後ろで支えてくれていた父の印象は、いまも懐かしくよみがえります。
親がしてくれたことをわが子に繰り返しているなあと思うことが子育て中には度々ありました。自分のレパートリーに組み込まれていることは、自然に身に付いているのでスムーズにできます。一方、そうでないことには当然、努力が必要になってきます。いいレパートリーが増えることは、それだけ心が豊かになることかもしれません。子育てを通して親は子どもに育ててもらっているのでしょうね。
いきいき通信2009年1月号掲載