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〝天理の両雄〟世界の頂点に 大野将平選手・丸山城志郎選手(天理大学OB)-世界柔道選手権東京大会-

天理柔道の精神を貫き、世界の頂点に輝く。

柔道の各階級の世界一を決める「2019世界柔道選手権東京大会」が、8月25日から9月1日にかけて東京・日本武道館で開催された。男子73キロ級には、天理大学OBで、リオデジャネイロ五輪金メダリストの大野将平選手(27歳・大原大教会ようぼく・旭化成所属)が満を持して出場。全試合一本勝ちで、4大会ぶり3度目の世界選手権優勝を果たした。また66キロ級では、同大OBの丸山城志郎選手(26歳・ミキハウス所属)が初出場にして初優勝を成し遂げた。なお、大会の通訳ボランティアとして、同大国際学部の学生ら48人が運営に携わった。

〝絶対王者〟の存在感
三度目の世界制覇 天理大OB大野将平選手


3年前のリオデジャネイロ五輪で頂点に立った大野選手は、その後、天理大大学院で学業に専念。約1年にわたる休養を経て、一昨年12月の「グランドスラム東京大会」から競技に本格復帰した。
大野選手が主戦場とする73キロ級は、世界の強者が名を連ねる〝激戦区〟。復帰直後は世界選手権の代表を逃したものの、次第に国際大会でも優勝を収めるようになり、今年4月の「全日本選抜柔道体重別選手権大会」では、一昨年の世界選手権覇者である橋本壮市選手(パーク24所属)を破って優勝。東京五輪が視野に入ってきたタイミングで、久しぶりに世界選手権への出場を決めた。
147の国と地域から、841人が参加した今大会。大野選手が出場した73キロ級には90人がエントリーした。大野選手の勝利を期待するマスコミ報道が過熱するなか、本人は「やり過ぎと言えるくらいの練習をして、試合直前まで自分の納得する準備ができた」と言い置いて武道館の畳へ。
ミクローシュ・ウングバリ選手(ハンガリー)との初戦では、激しい組み手争いの末、キレのある「内股」で一本勝ち。初戦から〝しっかり組んで一本を取る〟天理柔道を体現した。続く試合も得意の「内股」や「大外刈」で圧倒し、準々決勝では寝技に持ち込み、「腕挫十字固」で一本。

準決勝ではデニス・ヤルツェフ選手(ロシア)を相手に、「技あり」の判定を二度にわたって取り消されるも、終始冷静に攻め続け、最後は「巴投」からの「袈裟固」で合わせ技一本。どんな状況からでも勝ちに持ち込める対応力、技の豊富さを見せつけ、一分の隙もない圧倒的強さで決勝へ。

最後の相手は、リオデジャネイロ五輪の決勝でも対戦した、ルスタム・オルジョフ選手(アゼルバイジャン)。初戦から変わらぬ落ち着いた様子で、深々と礼をして畳に上がった大野選手は、この試合も序盤から優勢に進めると、開始1分17秒、引き手を取った瞬間に鮮やかな「内股」を一閃。一本勝ちで三度目の世界選手権優勝を決めた。
大野選手は「73v級の戦いは、まだ道半ば。五輪連覇は簡単ではないと自分自身が一番理解している。今回勝ったからこそ、もう一度やり直さなければいけないと思っている。来年の東京五輪は、自分にとってリオ五輪に続く2回目の集大成。ほかの選手よりも一つ上のステージで戦っていきたい」と語った。


なお、大野選手は大会最終日に行われた男女混合の団体戦決勝に出場。フランス代表のギヨーム・シェーヌ選手に対し、「内股」と「巴投」で合わせ技一本を奪い、日本代表の3連覇に貢献した。

執念の粘りでライバル制し初出場初優勝果たす
天理大OB丸山城志郎選手


「ここまで来るのに、いろいろな思いがあった  」。男子66キロ級の決勝。苦難を乗り越えてきた〝執念の柔道家〟は、勝利の瞬間、喜びを爆発させた。
4歳のとき、オリンピアンの父・顕志さんが営む道場で柔道を始め、中学時代には「全国中学校柔道大会」で優勝するなど、早くから頭角を現した丸山選手。〝一本を取る柔道〟に憧れて、天理大の門を叩いた。
大学では、2年先輩の大野選手と共に練習を重ねて着実に力を付け、国内外の大会で結果を残した。ところが、2年生の冬に左膝の前十字靭帯を断裂。手術を受け、約1年半のリハビリ生活を余儀なくされた。
「これからというときにけがをして、ライバル選手が台頭する状況に、焦りばかりが募っていた」と、当時を振り返る。
 大学卒業後はミキハウスに所属。慣れ親しんだ天理大の道場で稽古を重ね、昨年には「全日本選抜柔道体重別選手権大会」で初優勝を果たした。
東京五輪に向けて、負けられない試合が続くなか、「アジア大会2018ジャカルタ」では決勝で敗れ、1カ月近く練習が手につかなかったという丸山選手。そんななか、天理大柔道部の穴井隆将監督から「結果や代表ではなく、自分の柔道を貫き通せばいい」と言葉をかけられた。気持ちを切り替え、練習メニューを一新。持ち前の瞬発力に磨きをかけた。
その後は世界大会で優勝を重ね、今年4月の「全日本選抜体重別」では、ライバルの阿部一二三選手(日本体育大学4年)に粘り勝ち。東京五輪の代表争いで独走中の阿部選手に〝待った〟をかけた。
「美しい柔道を最後まで貫き通し、優勝する」と臨んだ今大会。〝日本刀のような切れ味〟と評される「内股」や「巴投」で勝ち進む。

準決勝は、ライバル阿部選手と三度目の対決。試合開始直後、激しい組み手争いの中で、丸山選手は左手を負傷する。さらに、阿部選手の投げ技をかろうじてしのいだ際に右足も負傷。
攻め手が鈍り、試合時間を折り返したところで、二つ目の「指導」が与えられたが、ここから再び前に出る。けがを感じさせない気迫とともに、切れ味の鋭い「内股」で阿部選手を攻め立てると、延長3分46秒、「巴投」の体勢から意表を突く「浮技」に切り換えて「技あり」。東京五輪の代表争いを左右する〝大一番〟を制した。

痛み止めを打って臨んだ決勝では、キム・インファン選手(韓国)から「内股」と「腰車」で「技あり」二つを奪い、合わせ技一本。〝遅咲き〟の26歳が初優勝の大輪を咲かせた。
丸山選手は「普通の選手より長い時間がかかっているが、東京五輪で金メダルを獲ることが最大の目標。今日だけは、このうれしさを身に沁みるほど味わい、明日から気持ちを切り替えて、さらに精進していきたい」と涙ながらに笑顔でコメントした。

会場の通訳ボランティア〝おもてなし〟が好評
天理大国際学部の学生有志


「2019世界柔道選手権東京大会」の会場では、天理大学国際学部の学生ら48人が通訳ボランティアを務めた(写真)。
 昨年11月の「グランドスラム大阪2018」で、全日本柔道連盟の常務理事を務める細川伸二・同大柔道部師範の仲介により学生を通訳ボランティアとして派遣した同大。その働きが高く評価され、今回の大会実行委員会からも「天理大学の学生に通訳をお願いしたい」と要請されたという。
ボランティアの内容は、出場選手の練習会場での呼び出しアナウンス、会場入口での一般客の案内、来賓や審判控室でのドリンクサービスなど多岐にわたる。
また、大会直前の8月21日から行われた、国際柔道連盟(IJF)の総会と理事会でも、通訳ボランティアを務めた。
11日間の全日程に参加した井上瑛太さん(外国語学科英米語専攻4年・東和分教会ようぼく)は「大学で学んだ英語を生かして、注目される大会を陰からサポートすることができ、大きな刺激となった。全日本柔道連盟のスタッフからは、『礼儀が良い、作業が丁寧、優しい学生が多い』と声をかけてもらい、大変光栄」と話した。


なお、この活動は、文部科学省の平成30年度「私立大学研究ブランディング事業」に採択された「天理大学スポーツブランドを活かした地域のスポーツ・健康づくり研究拠点の形成」事業の一環として行われた。

天理時報2019年9月8日号 掲載