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vol.22 思春期は一歩引いて見守る

金山 元春天理大学教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


私は大学で心理学を教えています。また、子供を育てる父親でもあります。
「心理学者なのだから、自分の子育ては、さぞうまくいっているだろう」と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。心理学の研究成果は一般論です。心理学を学んだからといって、「こんなときは、こうすればよい」といった〝正解〟が、すぐに得られるわけではないのです。自分自身の子育てに関しては、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ学んでいくしかないと思っています。
ただ、一般論とはいえ、多くの人に共通する心の発達について知ることは、子育てに一つの指針を与えてくれます。心理学を学べば、子育てに際して心の余裕が生まれます。
そこで今回は、親が余裕を失いがちな子供の思春期について取り上げます。知っておけば慌てずに構えていられる面があるので、参考にしてください。
小学校高学年から中学生くらいになると、子供は部屋に閉じこもり、親が話しかけても返事さえしなくなります。ときには「うるせー」「黙れ!」なんて暴言を浴びせられることもあります。親からすると、寂しさや戸惑いなどが入り混じり、心配になります。「うちの子は、おかしいんじゃないか」と悩むかもしれません。
でも、それが〝普通〟です。「何なの、その態度は!」などと深追いしないようにしましょう。子供は追い詰められると引くに引けず、反抗を続けざるを得なくなるものです。
こうした反抗期も永遠に続くわけではありません。「自立が始まったんだな」と、一歩引いて見守りましょう。
思春期の子供は、互いの顔色をうかがう特有の仲間関係の中で、強いストレスにさらされています。「学校は戦場」「地雷を踏まないように必死」と表現した子がいるほどです。学校で気が抜けない毎日を過ごしている子供が、家で荒れていても、ある程度は仕方ないと割りきりましょう。
激しい暴力や、限度を超えた暴言が出ていないのであれば、「家庭が息抜きの場になっているんだな」くらいに考え、どっしりと構えていたほうが、無用な諍いを生まずに済みます。
また、思春期の人間関係のこじれは、いじめや不登校につながることもあります。普段から子供を必要以上に追い詰めず、適度な距離で見守る配慮があれば、子供は親を信頼し、いざというとき、SOSを出しやすくなります。子供がたすけを求めてきたときは、あれこれ言う前に、ゆったりと話を聴いてください。

天理時報2019年9月29日号掲載