JOYOUSLIFE(ジョイアスライフ)

JOYOUSLIFE(ジョイアスライフ)は「陽気ぐらし」の手がかりとなる記事を厳選した、キュレーションサイトです。

vol.24 親も子供と共に育つ姿勢で

金山 元春天理大学教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


前回、青年期の発達課題は”アイデンティティー(私らしさ)”の確立に取り組むことだと述べました。
さて、アイデンティティーがある程度確立した青年は、いよいよ社会へ船出します。成人初期と位置づけられるこの時期には、社会の荒波に晒されながらも、パートナーを見つけ、協力することで、それを乗り越えていこうとします。
成人初期の課題は、こうして”他者と親密な関係を築くこと”です。それは、仕事上の仲間であったり、配偶者であったりします。
そうした初期の荒波を乗り越えると、今度は長い航海が始まります。社会へ船出したばかりのころのような戸惑いはなく、安定した毎日が続きます。
それは幸せなことですが、ふとしたときに「自分の人生は、このまま過ぎていくのだろうか……」と虚しさを抱くようになります。やがて「何か新しいことを生み出したい」「次の世代へ何かを残したい」という思いが生じてきます。
この時期は、人によっては子供を産み育てる時期に当たり、子育てを通じて、こうした心の課題に取り組むことになるのですが、これは必ずしも子育てに限りません。職場や地域など、さまざまな状況・立場で次世代を育てることは、成人期における共通の課題です。
これまでのエッセーでは、人の心には個人差はあるものの、多くの人に共通して見られる発達の道筋があり、各時期の特徴を踏まえた関わりによって心が健全に育まれていくとして、子供や青年との関わり方についてお伝えしてきました。
皆さんは大人として、また親として、子供や青年を育てる立場から、このエッセーを読み取ってこられたと思います。しかし、成人期の課題が「次世代を育てること」にあるならば、大人であり、また親である私たちも、子供や青年との関わりを通じて育てられているともいえるのです。
私自身も、親として、教育者として、子供や青年との関わりに悪戦苦闘しています。それは時に厄介で難しいものですが、人と人は世代を超えて互いの発達・成長を促し合っているのだと捉えれば、こちらも人として成長するための大きな学びの機会を与えてもらっているのだと納得できます。
完璧な親なんていません。親である私たちには、自らが不完全であることを受け入れる勇気が求められているのかもしれません。子供と共に育つ。そうした姿勢で、自分の人生を実りあるものにしていきたいと思います。

天理時報2019年12月15日号掲載