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日本宗教研究者が見る 天理教の社会福祉活動

アダム・ライオンズ【Adam Lyons】天理大学大学院・研究員


本教では明治43年の天理養徳院の開設を皮切りに、〝おたすけの心〟でさまざまな社会福祉活動を展開してきた。日本宗教の研究を専門とするアダム・ライオンズさんは、本教の諸活動に関心を持ち、近年は天理を拠点に、特に教誨師を中心とする調査・研究を展開している。おぢばに来るきっかけや、本教の社会福祉活動の特徴などについて話を聞いた。

特別インタビュー アダム・ライオンズ

天理教に関心を持ったきっかけは。

ハーバードの大学院生だったとき、アジア宗教学を専門とする先生が退官されることになり、学生たちにアジアの宗教に関する書籍を配っていました。私も何冊か頂いたのですが、その中の一冊が英語版の『天理教教典』でした。読んでみて「面白い宗教だ」と感じたことを覚えています。
その後、メーンテーマである日本の教誨師について研究を進める中で、天理教の教誨師が国内で3番目に多いことを知り、さらに関心を持つようになりました(コラム参照)。天理教教誨師連盟の方々には、さまざまな面で研究に協力していただき、大変感謝しています。
縁あって平成29年から天理大学に所属することになり、現在は天理を拠点に、各宗・各派の教誨師をはじめ社会福祉活動に従事する宗教者への聞き取り調査を進めています。
また、天理教校の聴講生として、天理教の教義や歴史についても学んでいます。

研究のメーンテーマである日本の教誨師について教えてください。

私の研究では、近代日本における国家と宗教の関係、さらに社会、法律、個人レベルでの宗教の立場や役割の解明を目標としています。
元々、刑務所の制度や構造には関心がありました。こうしたなか、宗教活動の一つとして教誨師について調べるうちに、「刑務所内の制度や構造は、国家と宗教の関わりや歴史を反映しているのではないか」と気づいたのです。
日本では明治時代、近代化の一つとして教誨師制度が制定されました。当初は浄土真宗の僧侶が国家公務員として活動を独占していたのですが、戦後の「政教分離」や「信教の自由」の影響を受けた結果、さまざまな宗教・宗派が教誨師の活動に携わるようになりました。つまり、国の方針によって教誨師の仕組みが変化してきた歴史があるのです。
加えて、日本とアメリカの制度や目的の違いにも着目しています。アメリカでは、教誨師は有給の公務員で、スピリチュアルケア(心のケア)を主な目的としています。一方、日本では無給のボランティアで、宗教・道徳的教育が中心になっています。

本教の教誨師活動の特徴は。

天理教教誨師連盟は、昭和28年に結成されました。「一れつきょうだい」の教えのもと、講話や相談を通じて被収容者に教理を説き、彼らの心のたすかりを目指して活動しています。
現在の日本では、元被収容者の出所後の生活を支える、中間施設が足りないという問題があります。その中で、教誨師や保護司を務める教会長の中には、こうした人々を「住み込み」として受け入れている事例が少なくありません。古くから身寄りのない方を受け入れ、抱えて通ってきた伝統がいまも息づいているのです。これは教誨師活動だけでなく、里親など多様な社会福祉活動に通じる、特筆すべき点だと思います。

「陽気ぐらし」の社会性

教理については、どんな興味を持ちましたか。

やはり「陽気ぐらし」ですね。陽気ぐらしは一人では実現不可能であり、みんなが一緒になって、共同のコミュニティーとして幸せになれる世界を目指すものです。宗教社会学的な観点から見れば、この概念には社会性が含まれていると言えます。これは社会福祉活動の展開にもつながっているでしょう。
これまでは教語や時代背景など、独学で勉強するだけでは、どうしても分からない部分がありました。しかし、天理大学や天理教校で授業を受け、先生方と話す中で、「かしもの・かりもの」など教理の中心部分を理解することができました。
また、さまざまな場所へ実際に赴く中で、〝教祖伝の世界〟を身近に感じられるようになりました。天理教は〝生きている宗教〟ですから、実際に天理を訪れて勉強するのが一番いいと思います。
ほかにも、研究を進めるうえで、天理図書館の存在はとても大きかったですね。宗教関連の膨大な資料が所蔵されていて、日本宗教の研究者として魅力的な環境です。創設者でもある中山正善・二代真柱は、東京大学の宗教学科を出られていることもあり、個人的に関心を持ちました。

今後の研究テーマは。

いずれ、天理教全体の歴史をまとめた書籍を英語で出版したいと考えています。というのも、手元にあった英語で書かれている天理教関連の資料は、ほとんどが明治時代のものだったんです。実は天理に来て初めて、20世紀の天理教の歴史について知ることができました。
講義やフィールドワークを通して得た具体的なイメージを織り交ぜながら、20世紀以降の天理教の歴史を描いてみたいです。


【Adam Lyons】
1985年イギリス生まれ。日本の教誨師をテーマに研究を進め、2017年、米国ハーバード大学大学院で博士号(宗教学)を取得。同年から天理大学大学院・研究員、京都アメリカ大学コンソーシアム博士研究員。研究成果をまとめた著書『カルマと刑罰(Karma and Punishment)』が来年、ハーバード大学アジアセンター出版会から刊行予定。

●コラム 日本の教誨師

教誨師とは、刑務所で受刑者などに対して徳性教育を施し、改心するように導く教誨を行う者のこと。無報酬で、僧侶や牧師などの宗教家が役割を担っている。日本の教誨師数は約1840人で、キリスト教や浄土真宗など、さまざまな宗教団体が携わる。なかでも、天理教の教誨師数は約160人で第3位、全体の1割を占めている。

天理時報2020年2月9日号掲載