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ほめて育てる-幸せへの四重奏vol.26-

元渕 舞ボロメーオ弦楽四重奏団ヴィオラ奏者


ボストンに住む私たちが、新型コロナウイルスの影響で外出自粛を始めてから、もう1カ月が経とうとしている。そんな生活に慣れるのに数日かかったが、いまではそれが普通となったし、むしろ家族が揃って3度の食事ができることを楽しんでいる。
わが家が外出自粛を始めたきっかけは、インターネット上で見た見知らぬイタリア人からのメッセージだった。
「アメリカがイタリアのような感染爆発状態になるまで、あと数日だ。時間がない。どうか私たちが犯した過ちを繰り返さないでほしい」と必死に語る彼の目には、死に直面する人の覚悟が見られた。
急いで生活必需品や日持ちのする食料を準備し、子供たちも自宅学習を始めた。私と主人もインターネットで仕事ができるよう調整した。イタリア人のメッセージから1週間も経たないうちに、ボストン市長は「緊急事態宣言」を出した。
ボストン市では、市立小学校の全児童が自宅で学習できるようにと手軽なコンピューターを購入してくれた。週に2回、先生とクラスメートがインターネット上に集まって朝の会。いつもと変わらないクラスメートの元気な姿を見て、次女も安心したようだ。
高校1年生の長女は、せっかく主役に選ばれたミュージカル出演がキャンセルになった。しかし、インターネットで世界中のシェイクスピア劇場の舞台が観られるので、世界がぐっと広がったようだ。いまは手話を学び、手話でお芝居ができないか挑戦中だ。
主人は普段は生徒の家に出向くピアノ教師だが、いまはインターネットでピアノを教えている。主人は音楽が子供たちに安心を与えているのを実感するという。
3月8日、私の所属するボロメーオ弦楽四重奏団は、ベートーヴェンの生誕250年を祝うコンサートを開催した。
実はその2日前、ボストンで初めてコロナウイルスの集団感染が発表されたばかりだった。私たちは、これが人生最後の演奏会になるかもしれないという覚悟を持って演奏しようと話し合った。当日は大勢の聴衆が、3時間のコンサートを演奏者と一体となって満喫してくれた。これを最後に、残り3月から8月にかけての音楽祭もコンサートツアーもすべてキャンセルとなった。
春休みを終え、私は先週から音楽院の生徒にインターネットで授業している。音楽院は閉鎖になっており、生徒たちは世界各地へ帰っている。時差のため早朝や夜遅くにレッスンしなければならないが、彼らの元気な顔を見るとこちらも癒やされる。彼らも世界がすべて変わってしまったわけではないと安心するようだ。環境や状況が変わっても、変わらない音楽への情熱と想いを胸に、今日も私は前進あるのみだ。

天理時報2018年4月12日号掲載