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いま、私にできることⅡ-幸せへの四重奏vol.26-

元渕 舞ボロメーオ弦楽四重奏団ヴィオラ奏者

 インターネットを通じて、久しぶりにそろった家族

外出自粛も3カ月目に入った。いまではすっかり、この〝新しい生活〟が普通になった。
先日の「母の日」に、二人の姉の家族と両親、それにわが家がインターネット上に集まった。家族全員がそろったのは私の結婚式以来ではないかと思う。たくましくなった甥たちや、すっかり女性らしくなった姪たちに目を見張った。そして、天理に住む両親、みんなの元気な顔を見て不安も吹き飛んだ。これから毎週会うことになった。 
はじめは違和感があったインターネットでの私のレッスンも、かえってこのほうが便利だと感じるようになった。主人は「行ってきます」と言ってピアノ室に入り、私はリビングルームで、宿題をする娘を横目にレッスンをする。
音楽院の生徒たちのリアクションもさまざまだ。学校で対人関係に悩んでいた生徒が、家ではグングン上達するようになったり、逆に、学校では人気者だった生徒が、すっかりやる気をなくしたりしていた。
私は、いま彼らが何を必要としているのか、生徒一人ひとりと向き合い、一緒に考えた。すると生徒たちに自分の時間が増えたことで、それぞれの個性が強く現れてきたことに気づいた。彼らが将来アーティストになるうえで、この異常な環境は自分を見つける絶好のチャンスだと思った。
アーティストとは、好奇心と想像力に満ち、いまの自分に満足せず、より上を目指して努力するものだが、そんな彼らが自分を見つめ、心の深層にふれるとき、独自の才能が目覚める。1600年代のヨーロッパでは、ペストの大流行中にシェークスピアが『リア王』を書いた。アーティストではないが、ニュートンは万有引力を発見した。
私は、生徒との会話の中で出てくる話題をもとに、「それはなんでだと思う?」と聞いて、彼らの好奇心をくすぐってみた。すると、はじめは「そんなこと、考えたこともなかった」と言っていた彼らも、自分と向き合うことで、いま自分がどうしたいのか、何が必要なのか、そして自分の歩くべき道が何なのかが見えてきたようだった。
やる気をなくしていたある生徒は、週3回の短いレッスンに切り替え、一歩ずつ前へ進むようにした。すると彼は友達を数人誘い、朝の8時にインターネット上に集まり、おしゃべりをしてから互いに練習を始め、数時間したらまた会って何を練習したかを話し合うという方法を見つけた。こうしているうちに、みんなうまくなってきた。
想像力に限界はない。私は、想像の翼を広げ、自分はこうしたい、こうなりたいと強く思う心があれば、何事にも不可能はないと信じている。あの時の苦労が花咲いたと将来言えるよう、いまは一歩ずつ前進しようと思っている。

天理時報2020年5月24日号掲載