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宗教から見た世界 「コロナ禍の世界」から見る宗教」

島田 勝巳天理大学宗教学科教授


 米国は「自由の国」といわれる。自らもそれを誇り、また他国にもそれを根づかせようとしてきた(1945年以降の日本におけるように……)。
 だが、その場合の「自由」とは一体、誰にとっての・・・・・・自由なのか? この2カ月間、米国はそのことを、あらためて自らの問いとして提起した。
 5月末、ミネソタ州で黒人男性が白人警察官に押さえつけられて死亡した事件をきっかけに、反人種差別デモが全米へ広がった。「黒人の命も大切(Black Lives Matter)」という切実な叫びが、全米各地にこだました。
「黒人の命」という訳語は、米国における「われわれ性」の現実をよく伝えている。米国が建国以来誇ってきた「自由」とは、つまり、この国にとっての「われわれ」の中には――法的規定とは別に――現実として・・・・・、黒人はいまだに含まれていないのではないか……。こうした人種問題の現実を黒人はもとより、肌の色を問わず、多くの国民が自らの課題として捉え、立ち上がったのである。
 米国史の一面は、この「われわれ性」をめぐる葛藤の軌跡でもあった。宗教史として見れば、清教徒(ピューリタン)の入植から始まり、プロテスタント諸宗派を中核として建国されたこの「実験国家」は、当初はそれ以外の信仰を「異なるもの」として偏見の対象にしていた。だがその後、カトリック、ユダヤ教、モルモン教などが徐々に米国の「われわれ」の中に取り込まれていった。2001年以降に浮上したのは、ここにイスラームは含まれるのかという問いであった。
 こうして見ると、米国の「われわれ性」が、WASP(白人/アングロ・サクソン/プロテスタント)という属性――さらには男性――を核として作られてきたものであることが、あらためて浮き彫りになるだろう。
 一方で、人種問題はまさに苦闘の歴史であった。1965年にようやく黒人投票権が確立した後も、黒人への構造的な差別が消えることはなかった。今回の反差別運動の高まりは、こうした文脈の中で起こるべくして起こったと言えるかもしれない。
 だが、これは決して米国だけの問題ではない。これを繰り返し「問題」にできるということ自体が、米国の可能性を示しているとも言えよう。
「われわれ」とは誰か? 誰を含み、誰を含まないのか? おそらくこの問いは、国や民族、人種を問わず、現代世界に生きるすべての人々にとって、今後も根本的な課題としてあり続けるように思われる。

天理時報2020年7月26日号掲載