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vol.31 感謝の「P循環」を起こす

金山 元春天理大学教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


 前回のエッセーで、人と人との間で生じることは、そこに関わる人々の影響の及ぼし合い、すなわち「相互作用」の結果であると説明しました。今回は、自分がどのような相互作用の中にあるのかを気づくことができる「P循環・N循環理論」についてご紹介します。

 この理論では、人の心の中にはP要素とN要素があると考えます。Pはポジティブ、Nはネガティブの略です。
「感謝」「安心」「喜び」「ゆるし」などはP要素。「怒り」「恨み」「妬み」「恐怖」「不安」などはN要素です。
 N要素は、人の中で循環して心と体にダメージを与えます。また、強いN循環の渦中にいると、周囲を巻き込み、近くの人や環境もN要素で満たしてしまいます。不安が怒りを生み、怒りが他者を責める行動につながり、他者を責めることで自分が責められるなど、NはNを呼ぶのです。

 N循環に入ってしまうことは誰にでもあるので、まずは自分自身がN循環の中にいると気づくことが大切です。そして、P循環へと早々に移行することがN循環から抜け出すための道です。P循環とは言うまでもなくP要素に満たされた状態のこと。自分がP要素に満たされると、周囲にもそれが広がり、P循環が生まれます。慎みの心が感謝を生み、感謝の気持ちが人助けにつながり、人を助けることで自分が助けられるなど、PはPを呼ぶのです。
 これは著名な臨床心理士である東豊博士が提唱されている理論です。東博士は、自分から周囲へP循環を広げていくことを「横型のP循環」と呼んでいます。そして、横型のP循環を生むためには「縦型のP循環」によって自分自身のP要素を高める必要があり、縦型のP循環とは「サムシンググレート」とつながることであると論じています。サムシンググレートとは、生命科学の世界的権威であり、ようぼくである村上和雄博士の言葉です。サムシング=何か、グレート=偉大で、直訳すると「偉大なる何か」という意味です。

 これは、村上博士が科学者の立場から一般社会に向けて親神様のご守護を伝えるために用いられた言葉です。東博士は、この言葉を信仰対象として用いているわけではありませんが、何ごとにつけて、「おかげさまで、ありがとう」と感謝することで、「いつでもどこでもP循環」を起こすために、臨床心理士の立場から、縦のつながりを意識することの大切さを論じているのです。

 N循環が渦巻く昨今です。私たちも、その渦に巻き込まれてしまいそうになります。しかし、私たちには信仰があります。親神様、教祖、祖霊様に感謝と祈りを捧げ、自らの心をP要素で満たしましょう。そして、周囲へP循環を広げていくことで、この空気を変えていきましょう。

天理時報2020年10月25日号掲載