ボストンに春が来た!-幸せへの四重奏vol.36-
元渕 舞

3月半ば、主人と私は新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種を受けた。科学者たちの努力の賜物であるワクチンが体中をめぐるにつれて、この1年間の不安やストレスがパッと無くなったかのような、なんとも言えない安堵感が戻ってきた。
私が住むマサチューセッツ州では、1月から医療関係者や警察官をはじめとしてワクチン接種が始まった。1月の終わりごろ、ようやく75歳以上への接種が始まったのだが、インターネットでしか予約できず、ご高齢の音楽院の先生たちが困り果てておられた。それを聞いて、私はボランティアを名乗り出た。
パソコン作業が得意というわけではなく、ご高齢の先生方よりは自分のほうが手続きが早いかもといった軽い気持ちで始めたのだが、ロックコンサートの席を予約するより難しいといわれていたワクチンの予約がスルスルと完了し、頼まれていた予約がすべて取れた。
木曜日になると、次の週のワクチンを申し込めるようになる。不思議なもので、毎週木曜日には、目覚まし音に関係なく早朝に目が覚め、親神様・教祖に「今日もみんなの予約が取れますように」と祈った。おかげで今週は25人目の予約が入った。
この私の〝能力〟は、あっという間に知られるところとなり、ハーバード大学の有名な教授からも依頼がきた。自分がワクチンから得たこの安堵感を、できるだけ多くの人に早く味わってほしい一心だった。人のためだと、こんなにもエネルギーが出るんだと自分でも驚いた。何年経っても、「みんな道の子」(『天理小学校校歌』)なんだなあと思った。
ワクチンの接種後、これまでオンライン越しだった生徒たちに学校で会えるようになった。1年経って、みんなで無事に、またこうして会えることに感謝した。
私は講義の最後に付け加えた。
「もし今日が最後の日だったらどうするか。やり残したことは何か、したかったことは何か。明日は必ずやってくるという保証は誰にもない。でも、ありがたいことに今日という日が自分に与えられた。『今』という時は存在しない。『今』と言った途端に過去になるからだ。時間の進む速さを感じながら、今日が最後だったらどうするかという気持ちで、一日も無駄にしないように頑張ってほしい」。そう伝えると、生徒たちに覚悟の表情が見えた。
アメリカでは、4月の半ばには16歳以上のすべての住民にワクチン接種ができるようになる予定だ。その際にも、予約に困っている人がいれば助けたい。「今日が最後」になる人が早く減るように。
春の暖かい日差しのなか、生徒たちが早く安心して、将来に向かって歩めるよう祈り続けている。
天理時報2021年3月28日号掲載