vol.34 「管理型」集団から脱却する
金山 元春
私は子供の成長を促す学級集団の育成について研究しています。日本の学校では、あらゆる活動が学級単位で展開されます。そのため学級集団の状態は、子供の発達に大きく影響します。ここで紹介するのは、子供の集団に関する研究の成果ですが、その知見は大人の集団にも通用すると思いますので、それぞれの立場で参考にしてください。
教育心理学者の河村茂雄博士は、長年にわたる研究成果から、子供の発達が妨げられる集団の特徴について整理しています。その一つは、教師の強い指導によって集団のルールが維持されているものの、教師と子供、子供同士のふれあい(心理学では「リレーション」といいます)が不足している「管理型」学級です。
集団の雰囲気としては「かたさ」が感じられます。子供は静かに授業を受けていますが、学習意欲は低く、主体的活動はあまり見られません。結果として、「できる子」と「できない子」が生まれやすく、学力が低い、運動が苦手など、集団内での地位が低いと見なされてしまう子供は、周りから軽視されるようになります。教師から叱責を受けることが多いのも、これを助長します。そうした風土が、いじめにつながることもあるのです。
また、河村博士の研究成果によると、教師が意識して指導行動を修正しない限り、同じ教師が担任する学級は、同じような集団状態に至ると指摘されています。教師には、集団にルールを定着させ、目標達成や課題遂行を促す指導力が必要です。
その一方で、子供の心情に配慮したり、集団を親和的にまとめたりするための援助的関わりも求められます。集団の状態を見極めながら、ルールを定着させるための指導とリレーションを育むための援助を、バランスよく実行していく必要があるのですが、一貫して厳しく指導する教師のもとでは、管理型の集団が生まれやすいとされています。
この理論は大人の集団でも参考になると思います。集団の風土に堅さや息苦しさを感じる場合、リーダーの管理が強すぎるのかもしれません。その場合は、メンバーの活動量を増やしたり、自己表現を促したりして、すべてのメンバーが認められる場面を設けることが大切です。
天理時報2021年6月6日号掲載