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vol.39 ‶一人の時間〟を大切に

金山 元春天理大学教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


 

 

 

このエッセーでは、さまざまなテーマを取り上げながら、人と関わることの大切さについてお伝えしてきました。しかし、これは常に誰かと一緒にいなければならないという意味ではありません。むしろ私は、人とのつながりを維持することに必死になって、心身を消耗させている人が少なくないことを危惧します。

たとえば、互いの顔色を過度にうかがう思春期の関係については、このエッセーでも取り上げたことがありますが、かつての子供は、学校から帰れば、そうした同調圧力から解放されていました。

しかし、いまの子供は、トイレにもお風呂にもスマホを持ち込み、「イツメン」からの連絡にはすぐに反応しなければならないという生活を続けています。イツメンとは「いつも一緒にいるメンバー」という意味ですが、その関係は友情によって維持されているわけではありません。イツメンとの関係に気を使うのは、学校での自分の居場所を失わないためであり、互いの本心にふれるような関わりは求められていないのです。

また、「一緒に食事をする仲間もいない惨めなヤツだと思われたくないから、一人では外食できない」という人もいます。実際、一人でいることは「ぼっち」(一人ぼっちのこと)と揶揄されることがあります。周囲から自分がぼっちと思われないために、友人が多いことをわざわざアピールする人もいます。

一方で、「一人で本を読んでいると、親や先生は『皆と一緒に遊んできなさい』と私を叱ります……。一人が好きな私はダメな人間ですか?」と悩む子供がいます。もしかしたら、いまの子供や若い世代が人とのつながりに囚われてしまうのは、私たちの社会が一人でいることを否定するようなメッセージを送っているからかもしれません。

社会から分断され、孤立している人には助けが必要ですが、一人でいることが悪いわけではありません。一人でいるからこそ感じられること、気づけることはたくさんあります。私はそうした‶一人の時間〟をもっと大切にしてほしいと思っています。一人でいることの意味を、あらためて丁寧に考える必要があるのではないでしょうか。

天理時報2021年12月22日号掲載