vol.42 〝気がかり〟との付き合い方
金山 元春
このエッセーでは、心理学やカウンセリングの観点から人付き合いについて論じてきましたが、私たちが人生で最も長く付き合う相手は誰だとおもいますか?それは〝自分〟です。
私たちは「こんなこと、ずっと考えていてもしょうがないけれど……」と思いつつ、あることが気になって頭から離れなくなることがあります。また、「何と言えばいいのか分からないけれど、なんだかモヤモヤする」などと、すっきりしない感じを抱くときもあります。私たちが心穏やかに納得のいく人生を歩むためには、そうした自分の内側にある〝気がかり〟と上手に付き合っていくことが大切です。
たとえば、あなたが「Aさんに嫌われたかもしれない」と気にしていたとします。ここで「私があんなことを言ったから……..。そもそも、あれがいけないかったかな。でも、私としては……..」などと、あれこれ考えを巡らせると〝気がかり〟はどんどん大きくなります。
このようなときは、どんな気持ちがこころに浮かんできても、「あ~、そういう気持ちがあるなあ」とそれをただ眺めるようにします。そうした姿勢のままでいるうちに、やがて自分と〝気がかり〟との間に自然と距離ができてきます。
そうして、ほどよい距離が取れてきたら、あらためて自分の内側に「何が言いたいのかな?」と優しくといかけて、その〝気がかり〟が伝えようとしていることに耳を傾けます。そして何かが浮かんできたら、それがしっくりくるかどうか確かめてみます。「嫌われたくない……..は、ちょっと違うか。私だって頑張っているのに……..かな?」などと、よりぴったりする感じが出てくるのを待ちます。
これをしばらく続けていると、「……..分かってほいし?あ~、そうだ。分かってほしい。うん。私、Aさんの考えを分かってほしいんだ」などと府に落ちる感じがやってきます。そうして気持ちが整えば、「今度Aさんにあった時に、自分の考えを素直に伝えてみよう」と動き出すこともできます。このように、自分の中に〝気がかり〟と上手に付き合うことは、他者と良好な関係を築くことにもつながるのです。
自分のなかで〝気がかり〟がまとわりついて離れなかったり、なんだかモヤモヤする感じがあったりするときは、この方法を試してみてください。
天理時報2021年5月11日号掲載