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Special Interview

ニーズ高まる「女性の力」 特性が発揮される職場とは

田島 弓子ブラマンテ株式会社代表取締役

田島弓子

 少子高齢化に伴い、労働人口が減少するなか、〝女性の力〟に対する社会のニーズが高まっている。元・日本マイクロソフト社営業部長である田島弓子さんは現在、女性社員と男性管理職の双方へのアドバイザーを務めている。新たな職場環境における人材の〝マネジメント術〟について聞いた。

――いまの仕事を始めたきっかけは。

 10年前、日本マイクロソフト社での仕事にひと区切りをつけたとき、自分の経験を生かす道としてキャリアアドバイザーを選びました。社会で働く女性の数は増え続けており、少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、そのニーズは一層高まっています。その一方で、〝女性の力〟を最大限発揮しきれていない状況を非常によく目にします。
 私自身も管理職の立場だったころ、女性社員のマネジメントに苦心した経験がありました。女性管理職としての経験を生かしたキャリアアドバイザーとして、職場における男女の橋渡しや、男性と女性それぞれの特性やポテンシャル(潜在力)を最大限発揮できるような職場環境づくりを考えるうちに、さまざまな企業や人事担当者からセミナーや講演を依頼されるようになったんです。

なでしこジャパンの育成論

――男女の仕事のモチベーションには違いがあるそうですね。

 男女間の脳の違いとして、男性はシステム脳、女性は共感脳が多いといわれています。システム脳は、論理的な判断が得意で、問題を解決することにやりがいを感じます。共感脳は、人が喜ぶ姿に自分も強い喜びを感じます。
「なでしこジャパン」の佐々木則夫・前監督は、男性プレーヤーには戦術のアドバイスに力を入れる一方で、女性プレーヤーには「明日の試合はおまえの力に懸かっている」といった、個人に期待する言葉をかけるそうです。
 職場での成長には、相手のタイプを見極めたアドバイスが必要です。特に自分と異なるタイプについて知ることで、思わぬコミュニケーション上のすれ違いを防ぐことができるのです。

働く女性の7割「自信ない」

――38歳で日本マイクロソフト社の営業部長に就任されました。どんなことに苦労しましたか。

 話を頂いた当時は本当に自信がなくて。ある研究者は、女性には自己肯定感が低い「インポスター症候群」タイプが多いと報告しています。私が女性を対象にしたセミナーなどで「心当たりのある人は?」と尋ねると、約7割が手を挙げました。仕事の結果が良くても「自分のおかげ」と思えず、悪いとすぐに「自分のせいだ」と感じてしまう。周囲から見ると十分な力を持っているのに、本人がそれを肯定できない。結果的に、周囲からは「積極性がない」「やる気がない」と判断されてしまうこともあるようです。
 セミナーでは、女性社員をマネジメントする男性管理職の方に、そうした自分自身の経験も踏まえて、まずは相手をしっかり観察し、ねぎらいのコミュニケーションへの意識づけを促しています。
 また、自分のスケジュール帳に、部下に割り当てた仕事の予定を書き込む。それだけで、期限が近づいてきたとき、「あの件は大丈夫?」と自然に声をかけることができます。年1、2回の面談でいくら親身に話を聞いても、それだけで社員の特徴を理解することは難しい。普段の仕事の中で「私のことを見てくれている」と感じてもらうことが、社員の自信と上司への信頼につながるのです。
 マイクロソフト社の本社の外国人は本当に人たらしで(笑)。日本人からすると恥ずかしくなるくらい褒められます。褒められながらも、「またハードルの高い仕事を任されるんだろうな」と思うんですけどね(笑)。それでも、やはり褒められるとうれしいですし、それが次の目標を達成しようという活力になっていました。

成長を評価し言葉で伝える

――グローバル化や人材の多様化が進む中で、どのようなリーダーが求められると思いますか。

 私自身、女性管理職の立場で苦しい日々もあったのですが、私なりに見いだした部下をまとめる方法は、「指導ではなくフォローを」「先導ではなく伴走を」というスタイルでした。
 心のどこかで「自分には自信がない」と感じている女性は少なくないのでしょう。「自分についてこい」のようなカリスマ的リーダーにはなれないかもしれない。でも、女性ならではの「観察力」「共感力」「コミュニケーション力」を生かしたマネジャーという道もあるんじゃないかと。
 実際、私の場合はメンバーの不安や悩みを細かくチェックしながらフォローし、男性的なリーダーとは違った形で、チームをまとめることができたのではないかと自負しています。
 職場における男女の違いを突きつめて考えていくと、自分と異なるタイプの人間をどうマネジメントするか、という課題が見えてきます。ある人材に本当に期待するならば、その成長をきちんと評価し、いつもはっきりと言葉で伝える。人材の成長、さらには多様化する社会で生き残る組織づくりには、この積み重ねしかないと考えています。

天理時報2016年1月29日号掲載

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【たじま・ゆみこ】1967年生まれ。大学卒業後、IT業界に入り、99年にマイクロソフト日本法人へ。営業部長を務めた。2007年、ブラマンテ株式会社を設立し、女性向けキャリア支援を中心に研修、コンサルティングなどを行っている。著書に『プレイングマネジャーの教科書』(ダイヤモンド社)など多数。