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ルターの宗教改革500年

島田 勝巳天理大学宗教学科教授


 マルティン・ルターによって開始された「宗教改革」から、今年で500年になる。
 1517年10月31日、ドイツの修道士で大学教授でもあったルターは、いわゆる「95箇条の提題」を公にした。当時、神聖ローマ帝国内のカトリック教会は、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂改築の資金調達のために「贖宥状」(免罪符)を販売していた。教会は信者に対し、これを購入することで罪の償いが軽減され、天国へ行くことが教会によって保証されると説いた。ルターの「提題」は、教会が説くこの贖宥状の教理は聖書に基づくものでないという立場から書かれた、一種の公開質問状であった。
 こうして始まった「プロテスタント」の流れは、カトリック教会と決別することで中世キリスト教世界を終焉させ、近代初期のヨーロッパの社会と政治に大きな変動をもたらした。ローマ法王ではなく、聖書の権威に基づくプロテスタントの教会は、その聖書解釈の違いに応じて、結果的に多くの宗派を生み出すことになった。それらを総称して、「プロテスタンティズム」と呼ばれることもある。
 プロテスタンティズムは、近代世界に大きな刻印を残した。よく知られているのが、M・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』のテーゼ(命題)だろう。ウェーバーはこの書で、資本主義的営利経営が、実はそれとは正反対に見えるプロテスタント的な禁欲の態度に由来するという、逆説的な(=意図せざる)因果関係を解き明かした。
 また政治的にも、民主主義、人権、抵抗権などの理念の担い手となったのは、プロテスタンティズムの潮流であった。異なった宗派同士の共存を図るためには、国家や法王のような権力を退け、自らの教会の独立を確保しなければならない。こうして「政教分離」や「信教の自由」といった法的・政治的理念が生まれていった。
 今日、民主主義や人権といった理念に挑戦するような宗教も、現実に存在する。だが、そもそも自らの信仰に忠実でいられるということは、歴史的には全くもって当然のことではなかった。そうした理念や価値は、直接的にも間接的にも、プロテスタンティズムの潮流に淵源するものなのである。

天理時報2017年11月19日号掲載




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