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天理高校理研部・園芸部
「エコワングランプリ」3位

市内の耕作放棄地を有効活用 無農薬の「奇跡のミカン」栽培

  高校生の柔軟な発想や行動力を生かした街づくりや環境活動が、各地で注目を集めている。こうしたなか、天理高校理研部・園芸部の生徒たちも、地域住民らと連携し、天理の街の〝エコ・シティ〟化を目指す取り組みを進めている。同部が立ち上げた「奇跡のミカン・プロジェクト」は、堆肥化したイチョウの落ち葉や無農薬栽培などの環境に優しい手法を用いて、市内の耕作放棄地を有効活用するもの。昨年10月、初めて収穫されたミカンは、見た目にばらつきはあるものの味は良く、農作業の効率化にもつながるという。このプロジェクトが先ごろ、高校生のエコ活動を競い合う「エコワングランプリ」の普及・啓発部門で、第3位に相当する「エコの環(わ)賞」を受賞した。


 「環境問題を突き詰めると、世界規模の話に発展して、何もできないような気がしてしまうんです。そうではなくて、普段生活する天理の街で何ができるのかを考えました」
 昨年12月、東京ビッグサイトで開催された第6回「エコワングランプリ」(主催=公益財団法人イオンワンパーセントクラブ、共催=毎日新聞社、後援=内閣府、文部科学省、環境省)の席上、「奇跡のミカン・プロジェクト」のプレゼンテーションに立った園芸部の實延美彩(じつのぶみさい)さん(2年)は、こう話す。
 同部では、親里のイチョウ並木から生じる大量の落ち葉を有効活用するため、10年前から「落ち葉の堆肥化」を研究。堆肥化した落ち葉の効果が近隣地域のブルーベリー園で確認されたところに、「地域のミカンを育てる手が足りない」との話が舞い込んできた。
「自分たちにできることはないか」と部員が話し合う中で、不可能とされていたリンゴの無農薬栽培を実現した「奇跡のリンゴ」のエピソードにヒントを得て、「イチョウの落ち葉を活用して、完全無農薬の〝奇跡のミカン〟を育てよう!」と、プロジェクトを立ち上げた。

地元農家や団体と連携

天高生が手がけた無農薬で〝安心・安全〟な「奇跡のミカン」

 こうして市内のミカン農家から15本のミカンの木を任されることになった部員たちは、通常、年に5~6回行われる農薬散布を取りやめる代わりに、3回の「ツボ刈」を実施。これは木の周りだけ草を刈り取る簡単な方法で、残された周囲の草むらでは生物の多様性が確保され、害虫の天敵も増えるというもの。
 部員たちは休日を利用してミカン畑へ足を運び、農家や地元NPO団体「環境市民ネットワーク天理」にも呼びかけ、共に汗を流した。
「できる人が、できる時に、できる事をする」をモットーに、各自が楽しみながら作業に当たったという。
 もちろん一番の楽しみは収穫のシーズン。昨年はミカンの収穫期である10月に台風が多く接近し、全国的に長雨となったことから大不作となり、ミカン相場は21年ぶりの高値を記録した。こうしたなか、「奇跡のミカン」15本は順調に実を結び、見た目はふぞろいながら美味しいミカンが収穫できた。
 耕地を提供した山田農園の山田和正さん(77歳)は、「思いのほか良い出来で、味も収穫量も申し分ない。若い人が関心を持ってくれるだけで本当にありがたく、一緒に楽しく作業させていただいた」とニッコリ。

先輩の研究を受け継ぎ

親里大路で掃き集めたイチョウの落ち葉を畑に伏せ込む生徒たち

  同部では、2007年から親里のイチョウ1千本の「健康度調査」を継続している。暑い日も寒い日もイチョウ並木に通って、調査に当たる6人の部員たちは、「過去のデータは二度と取り直すことはできない。先輩たちが築き上げてきた調査を、使命感を持って受け継いでいる」と口をそろえる。
 また、古くから〝天理名物〟とされたホタルの数を増やそうと、4年前からホタルが生息しやすい環境条件の調査も開始した。これらの調査結果は、過去にさまざまな賞を受賞。研究成果は「天理市環境展」や一般市民向けの「まほろばエコロジー講座」(天理大学主催)で発表するなど、市民への啓蒙活動にも力を入れている。
「エコワングランプリ」普及・啓発部門では、ミカン作りとともに、これまでの同部の取り組みを発表し、第3位相当の「エコの環賞」を受賞。単にミカンを無農薬で栽培するだけでなく、結果として作業時間の大幅な短縮に成功した点などが評価された。
 部員の一人で、幼いころから〝虫取り少年〟だったという中谷清人さん(1年)は、「地域の皆さん方が喜んでくださり、やりがいを感じている。グランプリの席上、生物多様性やミカンの糖度などについて質問を受けたので、明確に答えられるよう数値化にも挑戦していきたい」と話す。

 「奇跡のミカン」の初収穫を終えた昨年末、部員たちは親里で掃き集めたイチョウの落ち葉をミカン畑に伏せ込むなど、早くも来年の収穫に向けた作業を始めている。将来的に山の辺の道周辺で無農薬栽培が広がれば、河川の水質改善につながり、ホタルが増える可能性もあるという。
 指導に当たる川波太(ふとし)・園芸部顧問は「歴代部員たちの調査・研究が蓄積されてきたところに、地域の方とのご縁を頂いた。そのおかげで、好奇心旺盛な部員が中心となって、大規模なプロジェクトを進めることができている。今後も天理の〝エコ・シティ〟化に向けて、地道な活動を続けていきたい」と語った。
(文=大塚恵一)

天理時報2018年1月21日号掲載





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