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〝与えられた持ち味〟を活かす

金山 元春高知大学准教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


どんな人にも持ち味はあります。一見すると悪いところのように見えても、その活かし方によっては、その人が生き生きと輝く持ち味になるものです。
 私が大学院生だったころの話です。ある日、指導教員の先生に論文を見てもらおうと研究室を訪ねました。先生は「手が離せないから、向かいの部屋で5分待っていてくれ」とおっしゃいました。本来なら、その部屋で待つべきところです。しかし、私は「5分あるなら論文を読もう」と、別の書庫に入ってしまいました。先生はすぐに指定した部屋に来てくださったようですが、私がいないので、ほかの学生たちと一緒に探し回ってくださいました。その様子を騒がしく感じた私が「何かありましたか?」と書庫から顔を出すと、先生は私の落ち着きのなさに苦笑いをされました。
 最近では、むしろ「落ち着いている」と言われることが多いですが、私がせっかちなことは自覚しています。ただ、いまではそれを否定せず、自分の持ち味として活かそうとしているので、人からはそう見えないのでしょう。
 人は不思議なもので、自分に備わったものから目を背けたり、それを否定したりすると、かえってそれが大きくなってしまうことがあります。たとえば〝イライラしやすい自分〟を否定すると、ますますイライラしますし、〝クヨクヨする自分〟を嫌だと思うと、一層落ち込みます。
 実は私が自分のせっかちなところを否定せず、持ち味として活かそうと思えるようになったのは、そんな私を受け入れてくれた人がいたからです。先ほどの話には続きがあります。
 私を探し回ったその先生は、ほかの学生たちに「皆も時間を惜しんで論文を読む金山君を見習いなさい」とおっしゃったのです。説教されると思っていた私は、素直にうれしい気持ちになりました。
 さらに、せっかちであることを「いろいろなことに関心を持ち、新しいことに挑戦する力」と捉えれば、持ち味を活かすことになり、仕事に欠かせない大きな力となることにも気づきました。
 私も先生を見習って、出会う人たちの持ち味を引き出せるような存在でありたいと願っています。
 とはいえ、どうしても人の悪いところばかり目に付くときもあります。
 そんなときは「これも神様から与えられた、この人の持ち味であり、徳分なんだ」と捉えるように心がけています。
 そうすると、相手に対する見方が変わり、優しい気持ちで接することができるようになります。

天理時報2017年5月21日号掲載