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「うん、うん」と相槌を打つ

金山 元春高知大学准教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


高知城の近く、日本最古の路面電車「土佐電気鉄道」が走る側に高知大学のキャンパスがあります。私はここで、教師を目指す学生たちに「カウンセリング」を教えています。
 カウンセリングとは、さまざまな困り事を抱えた人に対して、専門的な視点や技術をもとに相談に乗ったり、援助したりする行為のことです。
 教師を目指すのに、国語や数学といった教科の知識以外に、なぜカウンセリングを学ぶ必要があるのか——と、疑問を抱く人もいるかもしれません。
 確かに教師は、子供たちに教科を教えることが役目です。しかし、いくら教科についての専門的な知識があっても、子供たちと良好な人間関係を築けなければ、子供たちは教師の言葉に聞く耳を持とうとしません。
 また、困り事を抱えた子供を援助することも教師の大切な仕事であり、そのためには保護者と良好な人間関係を結ぶことが重要です。
 良好な人間関係を結ぶことは教育現場に限らず、職場や家庭など社会全体の中でも大切なことです。そのためには、ちょっとしたコツや技術が求められます。
 このエッセーでは、「カウンセリング」の視点にヒントを得ながら、〝人と関わる知恵〟をお伝えしていきたいと思います。
 その〝導入〟として押さえておきたいことは、人間関係を結ぶうえで「相互作用」が大きなキーワードになるということです。相互作用とは、互いが互いに影響を及ぼし合うこと。自分自身のものの見方を変えたり、コミュニケーションを工夫したりすると、相手との関係がうまくいきます。相手が変わることばかり期待していても、前には進めません。こちらが相手の気持ちを慮ることが重要なのです。
 その〝基本〟となるのが、相手の話を丁寧に聴くことです。
 こんな話があります。ある女性が人生に行き詰まっていたとき、お道の信仰者に声をかけられ、天理教の教会を初めて訪れました。そこで、会長さんは、女性が話し終わるまでずっと耳を傾けたそうです。それまで誰かに相談しても、「あなたのここが良くない」「あなたはこうするべきだ」と指摘されてばかり。会長さんがじっくり話を聴いてくれたことが、ただただうれしくて、「この人についていけば、必ずたすけてもらえる」と確信し、その後、教会につながるようになったそうです。
 女性との出会いを〝わが事〟として受けとめて話を聴く会長さんの姿が、女性の胸を動かしたのでしょう。
 話を聴いているとき、ついつい「それはさあ……」と指摘してしまう人は、「うん、うん」と相槌を打つことから心がけてみてはどうでしょうか。

天理時報2017年4月9日号掲載