望ましい行動を具体的に伝える
金山 元春
教内では〝人材育成〟をキーワードに、さまざまな活動が行われています。そこで今回は、子育てについて取り上げたいと思います。
子供の行動は、たいていその子の性格や人柄によって説明されます。たとえば、あいさつをしない子供を見ると「引っ込み思案な性格」と思ったり、ほかの子の手を払っておもちゃを取る子供を見ると「短気で乱暴」と考えたりします。
また、子供がこちらの望むことをしなかったり、逆にこちらにとって困ることを止めなかったりすると「〝ダメな子〟だなあ」などと、子供の人格を否定してしまうことがあります。
しかし、これで子供の行動が変わるとは思えません。そこで発想を変えてみましょう。着目すべきは、子供の〝行動そのもの〟です。
ある状況で望ましい行動が見られなかったとき、「必要な行動をまだ十分に学んでいないか、あるいは不適切な行動を誤って学んでしまっているからだ」と考えるのです。つまり、あいさつをしない子供に対しては「この子はあいさつに必要な行動を、まだ十分に学んでいないのだ」と考えます。
また、ほかの子の手を払っておもちゃを取る子供に対しては「おもちゃを上手に借りるために必要な行動をまだ学んでいないか、手を払い除けることで、おもちゃを得ることができるという、不適切な行動を誤って学んでしまったのかもしれない」と考えるのです。
まだ学んでいないか、誤って学んでいるのであれば、機会を設けて、望ましい行動を具体的に伝えることが重要です。
たとえば、「きちんとあいさつしなさい」と言ったとしても、子供は具体的にどんなあいさつが、きちんとしたあいさつなのかが分からなければ、あいさつのしようがありません。
具体的に何をすれば良いのか、行動を伝える必要があります。「相手の顔を見て、笑顔で、大きな声で、こんにちは、って言おうね」などと伝えるのが良いでしょう。
そんな些細なことで本当に変わるのか、と疑問を感じる人もいるかもしれません。しかし、私たちは子供に何かをしてほしいとき、自分が思っている以上に曖昧な言葉を使うことが多いものです。「頑張りなさい」「ちゃんとしなさい」「なんとかしなさい」などの表現に心当たりがありませんか。
一方で、あなたが子育てで悩んでいるとします。そのことを相談した相手から「頑張って、ちゃんとなんとかしなさい」と返されたら、どうでしょうか。「どうしたらいいのだろう……」と、かえって不安になりませんか。大人だってそうなのですから、子供であれば、なおのことでしょう。
まずは、望ましい行動を具体的に伝えるようにしましょう。
天理時報2018年1月14日号掲載