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演奏家の悩み-幸せへの四重奏vol.1-

元渕 舞ボロメーオ弦楽四重奏団ヴィオラ奏者


 演奏家にとって一番つらいことがある。それは家族と離れ離れになることだ。1年の半分はコンサートツアー(演奏旅行)に出ているので、家族と一緒にいられない。何年経ってもツアー前は憂鬱になるし、空港でも涙目になってしまう。

 でも子供たちは、生まれたときから母親が仕事でいないことに慣れていて、明るく「いってらっしゃい」と送り出してくれる。夫も、忙しい私をよく理解して、留守中も子供たちが寂しくないように気を使ってくれている。

 演奏家仲間には、子供をもつことを諦めた人も少なくないが、私は仕事のために子供を諦めるなんて考えられなかった。しかしカルテット(四重奏団)は、オーケストラと違って代役が利かない。しかも、コンサートの予定は1、2年前から入ってくるので、いつごろ出産したらコンサートに影響せずに済むかと悩んだものだ。

 ところが、仕事に支障のないタイミングで妊娠したときは、なぜか毎回流産した。親神様から「自分の都合ではない、命の都合だ」と言われた気がした。

 長女・さくらの出産予定日は、一番忙しい夏のシーズンの真ん中だったが、カルテットのメンバーは文句一つ言わずにコンサートの調整をしてくれた。私は、これ以上みんなに迷惑をかけまいと、出産から1週間でコンサートに復帰した。

 子連れでツアーに出て、会ったこともないシッター(子守り)に子供を預けるのは不安だった。だが、ありがたいことに親神様は、いつも素晴らしいシッターを準備してくださった。生後6カ月になるまでに、娘のパスポートには6カ国のスタンプが押された。毎晩寝る前に「あなたが一番大事よ」と言って抱きしめた。

 長女が小学校に入ってからは、家に置いていくことが多くなったが、毎年夏休みは、家族そろってツアーに出るようにしている。いま長女は11歳、訪れた国は15カ国を超える。このごろは自称「ママのナンバーワン・ファン」。コンサートでは真っ先にスタンディングオべーション(相手を讃えて立って拍手すること)をしてくれるようになった。

 次女・はるは5歳だが、飛行機にこれだけ乗り慣れている5歳児も珍しいだろう。セキュリティー・チェック(安全確認)では真っ先にジャケットを脱ぎ、飛行機に乗ると安全案内を読むふりをする。
 先日、私がいなくなるので次女が寂しそうにしていると、長女が「ママは、たくさんの人をハッピーにするために行くの。みんなママが来るのを待ってるんだよ。パパとお姉ちゃんも一緒だから、ママに頑張ってって言おうね」と言っているのを聞いた。私は我慢してくれている家族の分も頑張ろうと思った。

天理時報2017年5月14日号掲載





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