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第二の家族-幸せへの四重奏vol.3-

元渕 舞ボロメーオ弦楽四重奏団ヴィオラ奏者


弦楽カルテット(四重奏団)は、音楽の世界でも少し特殊な立場だ。私の恩師で、元クリーブランドカルテットのチェロ奏者だったポール・キャッツ先生は、カルテットとは4人で成り立つ結婚のようなものだと言った。その通りだと思う。

まだ学生だったころ、ボロメーオ弦楽四重奏団の第一バイオリン奏者のニックから電話がかかってきた。「一緒に弾いてみないか?」と言う。初対面で、ニックと、彼の妻でボロメーオのチェロ奏者のイーサンと、モーツァルトのトリオ(三重奏曲)を弾いた。

初めの5分で、互いに「これだ!」と思った。音で奏でる〟〝会話〟がピタッと合った気がしたのだ。私には初めての感覚だった。結婚相手に出会ったときの〝ビビッ!〟というあれだ。異例の早さで、私はボロメーオのヴィオラ奏者として招かれた。

入団して17年経ったが、この間、最も長い時間を一緒に過ごしてきたのがボロメーオのメンバーたちだ。自分の家族よりも長く生活を共にしている。年間およそ90回のコンサートや練習だけでなく、演奏旅行中の食事や宿泊所まで一緒なので、ほぼ一日中顔を合わせている。

プロのカルテットの中には、宿泊所や飛行機をわざわざ別々にして互いの距離を保とうとするグループも珍しくない。私は逆に、音楽以外の場所でもメンバーと過ごすことが大切だと思っている。

一緒に食事をし、カルテット以外のことをしゃべる。音楽の話になると、練習の延長のようになってしまうので、それは避ける。みんなの今日の体調がひと目で分かる。私にとってボロメーオの仲間は、第二の家族だ。

この17年間、うれしいときも悲しいときも、いつも一緒だった。ボロメーオでのデビューコンサート(入団披露演奏会)に合わせてボストンまで来てくれた両親が日本へ帰るとき、タクシーが見えなくなるまで泣きながら手を振っている私の肩を、イーサンは無言で抱きしめてくれた。

学生時代のクラスメートだった夫・エレンと飛行機でばったり再会したときも、飛行機を降りてすぐ、イーサンは「マイはあの人と結婚する」と、預言者のように言った。そのときは「何言ってんのよう!」と笑ったが、それから2年後、私とエレンは実際に結婚した。出産のときも、一番に駆けつけてくれたのはボロメーオの仲間だった。

もちろん、互いのいいところも嫌なところも知っているけれど、それも全部ひっくるめて、それぞれの個性として尊重し、認め合うことが大切だと思う。ボロメーオの仲間は、私をそのまま受けとめてくれている。彼らと出会えたことに感謝!

天理時報2017年6月25日号掲載