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Special Interview

自立思考を育む鍵は「成長と貢献」にあり -現代を問う-

吉川孝之(株)マナベル代表取締役/人材育成コンサルタント


 少子化が進むなか、若い人材の確保に苦労する企業が少なくない。さらに、縁あって入社した新入社員の「3年後離職率」は3割を超える—。最新技術や社会問題など、現代社会の最前線で活躍する教内の専門家にインタビューするシリーズ企画「現代を問う」。第3回は、高校生から経営者まで幅広い世代に研修を行っている、人材育成コンサルタントの吉川孝之氏に話を聞く。時代の変化に伴い、内面も変化しつつあるといわれる若者を「自立へ導く育成方法」について語ってもらった。

――人材育成の現場で「昔のやり方が通じない」との声をよく耳にします。一体、何が変わってきたのでしょうか。

 大きなところからお話しすると、まずは少子化によって競争がなくなり、さまざまな場面で”椅子取りゲーム”をする必要がなくなってきました。モノも潤沢にあるので、「もらえて当たり前」という感覚が染みついています。
次に、小中学校の評価制度が、他人と比較する「相対評価」から、個人の力量に焦点を当てる「絶対評価」へと変わりました。「ゆとり教育」の導入です。
 しかし、ここで”ゆとり世代”などと揶揄するのではなく、変化の本質を知ることが大切です。端的に言うと、評価方法が「競争と結果」から「成長とプロセス」へと移行しました。その結果、いまの若者は競争の順位よりも「頑張って成長し、貢献したことを褒められたい」といったことを大切にします。
 つまり、行動する動機である”心のエンジン”が変わったと考えると分かりやすいでしょう。
「ゆとり教育は正しかったのか?」との質問は、「江戸末期の開国は正しかったのか?」と問うのと同じことです。時代の変化自体は善し悪しでは測りきれないと思います。まずは、その変化を真摯に受けとめ、人材育成の方法を見直すことが重要です。

育成の”3大NGワード”

――部下とのコミュニケーションがうまくいかない原因は、どこにあるのでしょうか。

 まずは、人材育成における”3大NGワード”を紹介します。それは「なんでや!」「おまえだけやぞ!」「何回目や!」です。
 人材育成において、「なんでや!」というのは、失敗した原因を尋ねる言葉ですが、そもそも本人がそれを自覚していることは稀です。変えられない過去の失敗を責めるのではなく、次にどうすればいいのかを一緒に考えることが大切です。
「おまえだけ」は先述の通り、周囲と比較されることが昔ほど”心のエンジン”につながりません。
 また、「何回目の失敗か」を数えるのではなく、回を重ねるごとに本人が成長できている点を見つけて褒めましょう。
 昔は「根性」という名の”マスターキー”1本で、心の扉を無理やりこじ開けるスタイルが主流でした。いまの時代はそうではなく、育成対象に合わせて心の鍵を使い分けたいですね。仕事へのモチベーションを生み出す”心のエンジン”は、一人ひとり異なるので、まずは寄り添うことが必要です。

――”心のエンジン”の見つけ方は?

 いかに傾聴するか。これに尽きます。
 優秀な営業マンは”しゃべらない”んですね。相手の話をとにかく「聴く」。すると本当のニーズが見えてきて、相手にふさわしい商品を提供できる。人材育成でも同じことが言えると考えています。
 もちろん、世代ごとに大まかな特徴はあります。モノがない時代は、お金、立場、名誉、家や車などが動機になりました。一方で、いまの若者は自己成長や貢献が”心のエンジン”になる場合が多いようです。
 先ごろ、平昌五輪で金メダルに輝いたフィギュアスケートの羽生結弦選手が、次の目標に「4回転アクセルの成功」を挙げていました。自己の成長をモチベーションとして語っていることは象徴的だと思います。

方法は自分で考えさせる

――より具体的な育成のポイントを教えてください。

 人材育成の”最終目的地”を明確にしておきましょう。私は「自分で考えて行動できる人」だと考えています。
 一方で、昨年「新人(若手)に感じること」について上司世代にアンケートを取ったところ、1位は「言われなければ行動できない」、2位は「自分から”報・連・相”をしてこない」でした。
 しかし、これは「言われなければ行動できない人」を、上司がわざわざ育ててしまっている可能性も考えられます。そこで上司が部下に「伝えるべきこと」と「考えさせること」の仕分けについて簡単にお伝えしましょう。
 まず、伝えるべきことは「いつまでに何を目指すか」つまり「目的」と「期限」です。これは「ビジョン」とも言い換えられます。必ずメモを取らせ、内容を復唱させて、ズレがないかを確認します。
 そのうえで「どうやって、どのくらいのペースで進むか」、つまり「目標」と「方法」は自分で考えさせるのがコツです。考えさせた内容は上司が必ず確認し、決して勝手に行動させてはいけません。報告・連絡・相談に来ない場合は、上司のほうからコミュニケーションを取りにいったうえで、「次からは、このタイミングで報告に来るんだよ」と教えましょう。
 このように寄り添いながら経験を積み重ねさせていけば、いずれ「自分で考えて行動できる人」へと育っていきます。
  

――子育てにも有効ですね。

  実は先日、4歳の息子に「ごはんの後、自分で食器を片づけさせる」ためには、どうすればいいかを考えました。最初はつい叱ってしまったのですが、それでは「叱られるのが嫌だからやる」だけになってしまい、自発的な”心のエンジン”は動き出さないと気づきました。
 そこで、少し考えて「笑ってるママと怒ってるママ、どっちが好き?」と尋ねてみたのです。当然「笑ってるママ!」となり、ここで「目的」が定まります。さらに「ママは、どうやったら笑うと思う?」と考えさせたところ、いろいろと話す中で「食べた後の食器を、自分で片づける」という「方法」を、自分から提案してくれました。こうして「ママを笑顔にする」というエンジンを搭載できた息子は、いま自発的にいろいろなお手伝いをしています。

天理で学んだ”土台作り”

――吉川さん自身の考え方の原点は、どこにありますか。

  高校まで天理の学校で学んでいたのですが、実を言うと、勉強の成績は良くありませんでした。あるとき、母に「俺、アホやから」とこぼしたところ、母から「え、あんたアホちゃうで。人とは違う発想力があるやん。これも頭の良さのうちやで」と諭されました。この言葉に励まされて、いまの自分があると思っています。
 また、私が新人研修で用いるテーマの一つが「ありがたい・素直さ・相手本位」の大切さです。この三つは、建物に例えると土台の部分に当たり、良い仕事をするためには、人柄という土台がとても大切です。
「当たり前の反対は、”有り難い”……」といった調子で説明していくと、若い人たちはとても共感してくれます。
 でも実はこれ、「感謝・慎み・たすけあい」を私なりに言い換えただけなんです。私が研修でお伝えしている土台の大切さは、基本的にすべて天理で学んだことです。
 若者たちが成長や貢献を目指すこの時代に、お道の考え方は一層輝きを増していると思います。

――これから、どのような人材を育てていきたいですか。

 “陽気な空間”を生み出せる人ですね。その大前提として、自らの足元である会社と家庭は、いつも陽気でストレスのない場所にしておくことが大切だと考えています。
「マナベル」という社名には、親神様が創造された天然自然の中から、いろいろなことが”学べる”との思いを込めています。「このことからは、いったい何が学べるのだろう?」という視点を日々忘れることなく、低い心で学び続けて、これからも時代に合わせて変化し続けていきたいと思います。

天理時報2018年3月18日号掲載


【よしかわ・たかゆき】
1974年生まれ。天理高校卒業後、大阪工業大学工学部で夜間に学びながら、昼間は設計事務所に勤務。その後、人材育成研修講師へ転身し、2010年(株)マナベル代表取締役。高校生から経営者まで幅広い年代層への研修を、年間160日以上実施している。教会本部ようぼく。



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