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〝兄弟トップリーガー対決〟実現

松本悠介リコーブラックラムズ所属 (26歳・竹肥佐分教会ようぼく)

松本仁志豊田自動織機シャトルズ所属 (24歳・同ようぼく)


見据える先は2019年W杯

昨年12月9日、日本ラグビーの最高峰「トップリーグ」の公式戦で、天理出身の〝兄弟対決〟が実現した。愛知県の豊田スタジアムで行われた「リコーブラックラムズ」対「豊田自動織機シャトルズ」戦だ。
この試合、豊田自動織機の松本仁志の強烈なファーストタックルで幕を開けた。倒されたのはリコーに所属する兄・松本悠介。そう、ともにトップリーグでレギュラーを張る松本兄弟が、両チームの13番センター(CTB)で先発出場したのだ。

BK(バックス)の中央右に位置する13番は、味方のトライをアシストしたり、体を張ったタックルで相手の攻撃を阻止したりするポジションとあって、華やかなBKの中では「縁の下の力持ち」的存在だ。
弟の容赦ないタックルを受けた悠介は、その後、試合巧者ぶりを発揮。自らをおとりにして弟にタックルさせ、次の瞬間、トライゲッターのWTB(ウィング)にパスを通す。さらに、俊足を生かして再三ラインブレイク(DFラインの裏を突破すること)を仕掛けた。
仁志は、後半途中で負傷交代したが、ゲームの要所で見せた一発で仕留めきるタックルは、スタジアムを盛り上げた。結果は35‐20でリコーの勝利。

試合後、カメラマンに促されて肩を並べる兄弟。
「おまえのタックル、やばいな」と、悠介は笑いながら仁志に言った。ともに身長180センチ、体重92キロの体躯(たいく)。二人は慣れないツーショットに照れたような笑みを浮かべた。
「トップリーグの公式戦で、初めて弟と直接対決することができて感無量。家族も天理から応援に来てくれたので嬉しかった。激しくぶつかり合うポジション同士、対面(といめん)でプレーするとあって、少し意識しすぎたかな」と、悠介は淡々と振り返った。
一方の仁志は「兄との真剣勝負は初めてだったので、不思議な感じだった。試合に負けたのは悔しいけれど、個人的には、いつも通り思いきってプレーできた」と、キッパリ言った。

〝天理のDNA〟受け継ぎ

三兄弟の長男・慶司さん(29歳)の背中を追って、悠介と仁志はともに5歳のとき、天理市内の少年ラグビークラブ「やまのべラグビー教室」でボールを手にした。
その後、天理中学校、天理高校でもラグビーに熱中。部の先輩・後輩として、ともに泥まみれになって楕円球を追い、〝天理のDNA〟である堅いディフェンスと展開ラグビーを身に付けた。

天理大学へ進んだ悠介は、同ラグビー部が関西大学Aリーグの3連覇をなし遂げるなか、WTBとして活躍。しかし4年生の春、試合中に右膝の前十字靭帯を断裂する大けがを負った。その年のリーグ戦には復帰できなかったが、持ち前の突破力とタックルの強さを買われ、卒業後はトップリーグの古豪・リコーに入団した。

一方の仁志は、関西大学ラグビー部で2年生からレギュラー定着。4年時には47年ぶりに大学選手権出場を果たし、初勝利に貢献。卒業後は新興の豊田自動織機へ。
2016年、トップリーグデビューとなった「ヤマハ発動機ジュビロ」戦で、途中出場からいきなり初トライ。以後、CTBの定位置を確保し、6試合で4トライを挙げ、鮮烈なデビューを飾った。

「昔から負けず嫌いで、何ごとにつけても負けたくない。兄もライバルのような存在」と仁志。
「弟とは、いつも連絡を取り合って、お互いのコンディションや近況などを話している。ともにトップリーグにいるので、弟の頑張りは、やはり刺激になる」と悠介。

〝未来切り開くタックル〟

今年3月、東京都内で開催された日本代表候補らが集うNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の合宿に、初めて仁志が招集された。これまで天理勢からは、立川理道(クボタスピアーズ所属)、井上大介(同)の両選手が招集されており、仁志で3人目となる。
仁志の代表歴は、大学4年時にニュージーランド学生代表と対戦した際の関西学生選抜のみだが、当時からタックルの強さには定評があった。昨季のトップリーグの試合でも好タックルを連発し、NDSの指揮官の目に留まったという。

有名選手ぞろいのNDS合宿に初めて参加した仁志は、日本代表の戦術理解やその対応に苦慮しながらも、グラウンドでは鋭い走りを見せた。
「各チームのトッププレーヤーたちと高いレベルでプレーでき、とても良い経験になった。代表クラスの選手は、プレーの意図をはっきり意思表示するコミュニケーション能力や、キャッチやパスなど個々のスキルが高く、自分に足りないところが分かった」と、収穫大のコメント。

来年9月には「ラグビーワールドカップ」が日本で初開催される。前回のイングランド大会では、日本代表が優勝候補の一角・南アフリカから大金星を挙げ、「史上最大の番狂わせ」と賞賛されたことは記憶に新しい。自国開催のW杯に向けて、代表選手に選ばれるための熾烈な争いが繰り広げられるだろう。
悠介は「まずはトップリーグの舞台で、弟とともに活躍することで、両親への恩返しをしたい」。
仁志は「今回与えられたチャンスをものにできるようチャレンジしたい。目標は、来年のW杯に出場すること」。

さらなる可能性を秘めた、天理出身の〝兄弟トップリーガー〟から目が離せない。