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自らの先入観に目を向ける

金山 元春高知大学准教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


「教師期待効果」という言葉が生まれた、有名な心理学の実験があります。

 ある心理学者が新学期初めに生徒たちを対象に知能テストを行い、その得点を教師に伝えました。すると、知能テストの得点が高いと伝えられた生徒の成績が、1年間で大きく向上したのです。

 ところが教師に伝えられていたのは、実際の点数とは関係なく、でたらめに並べられた生徒の名前だったのです。にもかかわらず、生徒の成績が向上したのはなぜでしょうか。

 実は授業を観察してみると、教師は「知能テストの得点が高い」と信じていた生徒に、「この子はできる」という期待を持って丁寧に時間をかけて教えていたことが分かったのです。教師の行動が生徒の意欲を高め、結果として学業成績にも影響を及ぼしたのだと考えられます。

 この研究結果は、人は他者に対して持つ〝先入観〟によって、その人への接し方を変えるという事実を示しています。
 ほかの事例を紹介しましょう。ある教師には、苦手な生徒がいました。とはいえ教師は、その生徒の人柄をよく知っているわけではありません。なんとなく苦手なのです。これを「よく知りもしないのに先入観を持って接してはダメだろう!」と正論を言っても、状況が変わるとは思えません。
 

人間関係では先入観を持たないことが大切――などと語られることがあります。しかし、人間にとって先入観を持つことは、避けられない〝心の癖〟のようなものなのです。
良好な人間関係を築くために大切なことは、「先入観を持ってはダメだ!」と息巻くことではなく、先入観にとらわれず柔軟に接し方を変えていくことです。そして、これを実践するために、いったんは自らの先入観に目を向け、それを認める必要があります。

 この教師も、自分がその生徒に良くない印象を持っていることを、まずは認めました。そのうえで、この生徒の〝良いところ〟を意識して探し、それを伝えるようにしたそうです。そうすると、その生徒との間で心地よいやりとりが増え、生徒に対する印象も変わっていったといいます。

 この教師は「私は先入観を持ちません!」などと自らを欺くことなく、むしろ先入観を自覚したからこそ、このような行動を起こし、人間関係を変えることができたのです。
この事例は、人間関係を実際に変えるには、自らを欺くことなく、とはいえ自らを責めるのでもなく、具体的な行動目標を持って、それをこつこつと実行していくことの大切さを教えてくれます。

天理時報2018年4月29日号掲載




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