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Second Episode「カーテンの向こう側」

立川理


国立競技場

平成23年1月、天理大学ラグビー部が全国選手権で初めて決勝に進んだ。

準決勝、決勝戦まで勝ち進むと、国立競技場で試合をさせてもらえる。このまたとない機会に、弾丸ツアーなる応援バスに家族で乗せていただき、国立競技場へ向かった。
         
国立競技場といえば、50年前の東京五輪の会場として造られ、アメリカのボブ・ヘイズ選手が100メートルで10秒という当時の世界タイ記録を作り、マラソンではアベベ・ビキラ選手がローマ五輪に続く世界初の2大会連続金メダルという快挙を果たし、同レースで日本の円谷幸吉選手がデッドヒートを演じ、銅メダルを勝ち取った場所である。

聖火台もそのままの形でスタンドの最上段に見える。当時テレビで見た場所に足を踏み入れ、何とも言えない感激と興奮を覚えた。
「よくぞこの場所に連れて来てくれた」と、チームと息子に感謝。

スタンドを見渡すと、「天理」の文字の入った大小の旗の中に、祭典日に掲げる玄関幕が張られていたのにはびっくりしたが、心強い応援団を得てうれしく思った。

準決勝は完勝したものの、決勝は残念ながら僅差の敗戦。
選手たちは悔しい思いをしただろうが、本当に濃い内容で、「あっぱれ!」というラベルを貼るにふさわしいゲームだった。
多くの人から「感動した。ありがとう」という声を掛けていただき、歴史ある競技場で、しかも大勢の応援の中でプレーできる子どもをうらやましく誇りに思った。

ありがとう

後日、飛込競技の五輪選手だった金戸幸さんが、「天理時報」の「今日もママは腕まくり」というエッセーの中で、息子のことを次のように書いてくださった。

「私たちが親里の本部勤務者住宅の3階に住んでいたとき1階には、4人の男の子がいつも元気に走り回っている一家が住んでいた。その末っ子が、いまのキャプテンだ。
(中略)

表彰式の後、一人でレフェリーに頭を下げ、優勝チームの監督に握手を求めに行った天理のキャプテンの姿に、私は胸を打たれた。
志は高く、しかし心は低いキャプテンの姿を見て、天理のラグビーはなんて素晴らしいのだろうと思った。

選手がフィールドを立ち去るとき、ひときわ大きく『ハル、ありがとう!』という声が聞こえた。
彼はその声に反応し、声の主に向かって左手を高く掲げた。姿は見えなかったけれど、あれはきっと、彼のお母さんの声だ」


それにしても、騒然としているスタンドの中で、息子の動きを見ていたり、家内の声が耳に入っていたりするとは、さすがに多くの経験を積まれた一流のアスリートだと思った。

後日、金戸さんのお父さんとお会いする機会があり、その記事と娘さんの話題になった。
お父さんは、「娘がアトランタ五輪で決勝まで進み、メダル圏内に付けていたのですが、最後の試技でミスをしてメダルを逃してしまったんです。
競技が終わり応援席にあいさつに来た時、娘のそばに行って声を掛けてやりたかったのですが、スタンドからはかないません。

その時とっさに出た言葉が『ありがとう』でした。『おつかれさん』『残念だったね』ではなく、この言葉しか出なかったんですよね」
と、しみじみ話してくださった。

全く同感!

一つでも多くの感動を

決勝は、体格や経験値を含め、大方が相手有利との見方だった。

けれど、結果は予想に反して、終了1分前まで同点という素晴らしいゲームを展開してくれた。

「柔能よく剛を制す」という言葉がある。

たとえ小さくても、それに負けないだけの身体に鍛え、身体に見合った工夫と技を極め、そして何より強い精神力を持って臨めば、予想以上の結果が得られる。まさにこのことを身をもって示し、見る者に感動を与えてくれた。

親神様によって生かされている日々の暮らしの中で、身近に起こる事柄の中には、たとえ小さくささいな事であっても、多くの感動を得ることがある。

それを見過ごさないで、心から「ありがとう」という言葉を交わせる日々でありたい。

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