金井大旺選手 110メートル障害で日本新

日本陸上選手権初V 福井の金井大旺選手
福井県スポーツ協会所属の金井大旺選手(22歳・福井市)は、6月22日から山口市の維新百年記念公園陸上競技場で行われた「日本陸上競技選手権大会」の男子110メートルハードルに出場。13秒36の日本新記録で初優勝に輝いた。
北海道函館市出身の金井選手は、小学3年生から陸上競技を始めた。当初は100メートルの選手だったが、「試しに走った」というハードル種目で好記録が出たことから、ハードルを専門にするようになった。
「ハードルを跳ぶのが、とにかく楽しかった。幅跳び種目でも良い成績が出ていたので、自分は『跳ぶ』競技に向いていると感じた」と振り返る。
小学6年生時、全国大会のハードル種目で準優勝。その後、地元の中学・高校で陸上競技を続けた。
その一方で、函館市内で歯科医院を経営する父・敏行さん(63歳)の後を継ぐつもりで学業にも励んだ。高校卒業後は医療系大学への進学も考えたが、3年時のインターハイで5位入賞に終わったとき、「思うような結果が残せなかった。さらに専門的な環境で記録を残したい」と進路変更。為末大氏など多くの五輪選手が輩出したハードルの名門・法政大学へ進学した。
競技に打ち込む傍ら、歯科医になるための勉強も欠かさない。
金井選手は「陸上選手を続けるのは、2020年までと決めている。悔いを残さないことを大切にして、来る東京五輪を目指す道と歯科医の道、どちらの夢もあきらめない」と力強く語る。
14年ぶりに日本新記録
高校時代から、ほかの選手の走りを録画した映像を分析し、自らの走りに取り入れてきた。大学進学後、独自の分析に加え、一流の指導者・先輩アスリートからアドバイスを受ける中で「自分の伸ばすべき部分と修正するべきポイントが、よく分かった」と話す。
その言葉通り、大学陸上界でも早くから頭角を現すと、1年時の「アジアジュニア陸上競技選手権大会」で優勝。一昨年冬、腰の疲労骨折に見舞われたが、復帰戦となる昨年5月の「関東インカレ」は大会新記録を出して優勝。さらに9月の「日本学生陸上競技対校選手権大会」も制した。
大学卒業を間近に控えた冬場は、さらなる高みを目指し、全身の筋力と体幹トレーニングに着手。13秒53の自己記録更新を目標に走り込んだ。
大学卒業後、福井県のスポーツ協会の選手兼特別強化コーチに。練習は母校・法政大で続けられることになり、競技に打ち込む環境が整った。
五輪を目指すうえで、今夏の「アジア陸上競技選手権大会」の初出場を直近の目標に掲げ、4月末の「織田幹雄記念国際陸上競技大会」では、追い風参考記録ながら自己ベストを0.01秒更新した。
迎えた今大会は、アジア大会出場の最終選考会を兼ねる。
大会2日目。男子110メートルハードルの予選と準決勝を、いずれも1位通過してファイナルへ。
「決勝にピークをもってこられるように調整を重ねてきた。朝起きて立ち上がったとき、その日の調子が分かるが、決勝当日は〝イケる〟と直感した」自信を持ってスタートを切ると、自ら「ゾーン(極度に集中した状態)に入っていた。二つ目のハードルを跳び越えて以降の記憶がない」と振り返るように、無心で110メートルを駆け抜けた。
記録は13秒36。それまでの日本記録13秒39を14年ぶりに塗り替えるとともに、自己記録を0.17秒更新しての優勝。そして、アジア大会への初出場を決めた。
金井選手は「13秒4台を目指していたので、今回の記録は予想を上回り、とてもうれしい。これまで海外のレースでは良い走りができていないので、初出場となるアジア大会では、しっかりと走って優勝を狙っていく」と頂点を目指す。
「アジア陸上競技選手権大会」は8月25日から、インドネシアで開催される。
天理時報2018年7月8日号掲載
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