〝助けてくれるもの〟を書き出す
金山 元春
大きなストレスを抱えているにもかかわらず、その状況を自分の力だけで解決しようと頑張り続ける人がいます。
頑張ることは決して悪いことではありませんし、おかげで成長できるということもあります。
その一方で、独力による解決にこだわることが、かえって状況を悪化させてしまうこともあります。
心理学では、自分が困難な状況に陥っていることに気づき、必要に応じて他者に援助を求める行動は、人が身に付けるべき重要な能力であると捉えられています。
しかしながら、一般には「他者に援助を求めることは弱い人のすること。情けないことだ」という考え方が、まだまだ根強く残っています。
心身が不調に陥っても他者に援助を求めない心理の背景には、こうした考え方が影響しています。
また、ストレスを抱えると、考え方が極端になるため、困難な状況にあるときほど、「人に頼るなんてことはできない!」と頑なになってしまうことがあります。
あなたの周りに、そうした頑なさに苦しんでいる人がいれば、「大変なときは、お互いさまだよ」と優しい言葉をかけてください。
そして、その人を助けてくれそうな人、過去に助けてくれた人などについて尋ねながら、その名前を紙に書き出す作業をしてみてください。
その後で、紙に書き出した人に、援助をお願いするための方法を一緒に考えればいいでしょう。
ただ、他者に援助を求めることが苦手な人にとって、それを実行に移すことは、すぐには難しいかもしれません。
そうした場合は、書き出された人の名前を一緒に眺めるだけでも構いません。
誰かを思い浮かべるだけで心が救われる、気持ちが落ち着く、元気が出るということがあります。
また、ここで書き出す人は、直接の知り合いでなくても構いません。
歴史上の人物でも、スポーツ選手でも、芸能人や歌手でも、さらにいえば、人ではなく動物でも、植物でも、マンガやゲームのキャラクターでも、ぬいぐるみでもいいのです。
こうした作業が頑なな姿勢を和らげ、心に余裕を取り戻すきっかけになります。
心に余裕があれば、自分がたくさんの人や物から助けられていることに気づくこともできるでしょう。
その気づきが、「今度は私が人を助けさせてもらいたい」という思いへとつながっていくと信じます。
天理時報2018年9月2日号掲載