第4回:怒りのバーは上がったり下がったり
山﨑洋実

こんにちは。ひろっしゅコーチこと山﨑洋実です。
優しいママになるはずだったのに、現実はいつも怒鳴ってばかり。イライラしてつい言い過ぎてしまって寝顔に謝る毎日。そんな自分が嫌で、怒らないママになりたくて、私の講座「ママのイキイキ応援プログラム(通称:ママイキ)」に参加される方は多いです。
怒らないママになりたい
怒りの感情というのはやっかいなもの。感情的になることは誰にでもあります。感情のコントロールは難しいものだと思われがちですが、実は自分の感情は自分でコントロールできるのです。
どんなに機嫌が悪くても、家の中では子供に怒鳴り散らしていても、外でママ友に会ったらニコニコとあいさつできますよね。ではなぜ、家族には怒りをぶつけてしまうのでしょうか。
一つの場面を想像してみてください。あなたの部屋のリビングです。大きな白いラグマットが敷いてあります。久しぶりによく晴れたのでラグマットを洗濯することにしました。大きくて重いラグマットを郊外の大型コインランドリーまで車で運んで、何時間もかけてキレイに洗って乾かしました。
真っ白に洗い上がったラグマットをリビングに広げてほっと一息。そのときです。お子さんや旦那さんが真っ赤なブドウジュースの入ったコップをラグマットにひっくり返してしまいました。当然、洗ったばかりのラグマットには大きな染みが……。
さて、あなたはどうするでしょう。きっと間違いなく怒りますよね。
ではジュースをこぼしたのが、例えばあなたの大好きな芸能人だったらどうでしょう。もしくは仲良しのママ友だったらどうですか? おそらく、怒らないと思います。それどころか「おけがはないですか?」「洋服は汚れてない?」なんて相手を気遣う言葉を掛ける余裕があるかもしれません。芸能人やママ友なら許せるということは、怒らない選択肢もあるということなんですね。
怒りの裏側にある本当の気持ち
私たちはみんな心の中に「怒りのバー」を持っています。私たちは、この怒りのバーを相手や状況によって上げ下げしています。家族や身近な人に対しては怒りのバーは上がりやすくなるので、ささいなことでもすごく腹が立ったりするのです。
「怒り」は第二次感情と呼ばれ、突然出てくるのではなく後から湧いてくる感情です。怒りの手前には必ず、「期待」「悲しみ」「不安」「心配」など本当の気持ちがあります。ラグマットの例で言うと、「せっかく洗ったのだからしばらくはキレイなままだといいな」という期待。「洗うのは大変だったのに、その苦労が無駄になってしまった」という悲しみ。そういった感情がもとになって、怒りの感情が生まれます。
でも怒りの感情を悪者にしないでくださいね。怒ることそれ自体は悪いことではありません。でも怒りの感情は、ものすごい勢いとパワーを持っているもの。怒りを相手に投げつけても、それは跳ね返ってくるだけなのです。感情はぶつけるものではなく、伝えるもの。怒りの裏側にある本当の気持ちは何なのか、まずは自分の気持ちを丁寧に見留めてあげましょう。
次に、自分の本当の気持ちを伝える練習をしてみましょう。最初に怒りをぶつけてしまってもいいのです。「せっかく頑張って洗ったのに、残念で怒ってしまったの」と、気持ちを伝え直せば大丈夫。自分の気持ちを素直に相手に伝える習慣が付くと、怒りのぶつけ合いもだんだんと減ってくると思います。
そしてもう一つ。自分の感情はコントロールできますが、たとえわが子であっても自分以外の人間の感情はコントロールできないということも覚えておいてください。怒ってる人に「怒らないで!」と言ってもそれで穏やかな気持ちにはなれません。行楽地などでグズって泣いている子供に向かって「せっかく来たのだから楽しみなさい!」と怒っているパパやママを見掛けることがありますが、それで楽しくなる子供はいませんよね。
自分の感情と丁寧に付き合えるようになったら、次はぜひ子供や夫など身近な他人の感情も、丁寧に見留めてあげられるようになってください。相手の本当の気持ちを感じることができるようになると、相手の怒りに巻き込まれることもなくなります。相手から怒りのボールが投げつけられても、正面から受け止めて投げ返すのではなく、かわしたり、やり過ごしたりできるようになるのです。
怒りのバーを上げずにいるためには、自分の気持ちが満たされていることがとても重要。自分が機嫌よくいられるのはどんなときか。できるだけたくさん、自分をご機嫌にする方法を知っておくといいですね。ママの怒りのバーが下がっていると、家族の中にハッピーな空気が流れます。
今日からぜひ、怒らないママではなく、怒りとうまく付き合えるママになってくださいね。
【山﨑洋実(やまさきひろみ)】
HAPPY MOMMY プロデューサー&コーチ。「Fine-Coaching」主宰。結婚後にコーチングを体系的に学び、自身の妊娠出産を経て、「ママのイキイキ応援プログラム(通称:ママイキ)」をスタート。ママ向けコーチングの第一人者として「ひろっしゅコーチ」の愛称で親しまれ、全国の悩めるママたちにアドバイスを送っている。