第6回:「会話のはじめはYESから!」
山﨑洋実

こんにちは。ひろっしゅコーチこと山﨑洋実です。
私の講座「ママのイキイキ応援プログラム(通称:ママイキ)」では、何度も繰り返し「感情を丁寧に扱うこと」の大切さをお話しします。自分の感情も相手の気持ちも丁寧に扱うこと。それがコミュニケーションの基本だからです。
人は誰でも皆、自分の話を聞いてほしい、気持ちを分かってほしいと思っています。それは子供も同じ。でも私たちは母親になるとなぜか、わが子に対しては行動の指示ばかりしてしまいがち。
「今日ね、運動会の練習があって、すごく疲れちゃった」と帰ってきた子供に開口一番、「いいから先に手を洗っちゃいなさい。おやつ食べたら宿題するのよ!」と行動の指示。転んで「痛い〜」と泣く子供に、「泣かないの!前を見て歩かないから転ぶんだよ。ちゃんと歩きなさい!」と行動の指示。
どうですか。心当たりはありませんか? 多くのお母さんたちが、このパターンの会話をしています。子供は気持ちを伝えているのに、行動を指示してしまう。時には「それくらいで疲れたなんて言わないの!」「痛くない!」と感情や気持ちさえコントロールしようすることもありますよね。自分やママ友の親子の会話、ちょっと意識して観察してみてください。
子供は、自分の感じた気持ちをそのまま、まるごとママに伝えて受け止めてほしいのです。楽しかったこともうれしかったことも、嫌だったことも悲しかったこともまるごと全部です。感情には良いも悪いもありません。どんな感情も、その子が感じた素直な気持ち。ポジティブな感情もネガティブな感情も全てをママに受け止めてもらうことで、子供は自己肯定感を育んでいきます。だからといって無理に共感する必要はありません。「そんなふうに思うなんてよくないよ」と否定せずに、ただ「そう思ったんだね」「それは大変だったね」「だからうれしかったんだね」と、子供の気持ちを受け止めてあげること。それだけで子供の心は満たされるものなのです。
「Yes&の法則」
その上で、どうしても行動の指示をしたいときには「Yes&の法則」を使ってみましょう。これは、まず子供の気持ちを「Yes」で受け止めてから、「&」でしてほしい行動を伝えるテクニック。どんな会話でもまずはYesで受け止めてあげます。特に、感情や気持ちに関わる言葉が出たら「Yes」です。
「運動会の練習で疲れたぁ」と帰ってきたらまずは「今日は疲れたんだね、大変だったね(Yes)」、そして(&)「手を洗ったらおやつ食べてね。宿題もやってね」として欲しい行動を伝えます。
転んで「痛い〜」と泣いたらまずは「痛かったね、大丈夫?(Yes)」、そして(&)「前を向いてちゃんと歩こうね」です。子供は「気持ちを受け止めてもらった」と満足すれば、その後の行動の指示も受け入れやすくなります。たくさん「Yes」と言ってもらうほど、やる気スイッチは入りやすくなるのです。
「行動のコントロール」を手放しませんか?
この連載でも何度もお伝えしているように、わが子であっても他人の感情はコントロールできません。そして行動のコントロールができるのも、子供が小さいうちだけ。自我が芽生えてきたら、脅してもなだめすかしてもママの思う通りには動かなくなるものです。なぜなら人は、自分で決めて自分のタイミングで動きたい生き物だからです。「言うこと聞かないと、おやつあげないよ!」はいつまでも通用する脅し文句ではありません。
だから「Yes &の法則」を使いながら、同時にママは少しずつ「行動のコントロール」を手放す練習も始めていきましょう。いきなりゼロにすることは難しいけれど、今すぐやめても問題ないような指示はやめてみませんか。お子さんの年齢に応じて、自分で判断できることはさせてみましょう。
朝起きてから寝るまでに、自分が子供にどんな指示を出しているか、書き出してみるといいですね。早く起きなさい、顔を洗いなさい、ごはんを食べなさい……。実にこまごまと、たくさんの指示を出していることに気が付くかもしれません。
その中でどうしても指示しなくてはならないことはどれくらいありますか? 子供には判断できないこと、任せてはおけないことはどれくらいありますか? 失敗から学ぶこともたくさんあります。命に関わることは別として、自分で考え判断する経験を積むことも子供の成長には必要なこと。子育てのゴールは自立。誰かの指示がないと動けない大人に育ったら、後が大変ですからね。
【山﨑洋実(やまさきひろみ)】
HAPPY MOMMY プロデューサー&コーチ。「Fine-Coaching」主宰。結婚後にコーチングを体系的に学び、自身の妊娠出産を経て、「ママのイキイキ応援プログラム(通称:ママイキ)」をスタート。ママ向けコーチングの第一人者として「ひろっしゅコーチ」の愛称で親しまれ、全国の悩めるママたちにアドバイスを送っている。