第12回:子供の本質は変えられない!
山﨑洋実

こんにちは。ひろっしゅコーチこと山﨑洋実です。
この連載では、子育てをテーマに親子間のコミュニケーションについて取り上げてきましたが、今回は少し視点を変えて、夫婦間のコミュニケーションについて考えてみようと思います。
子育てがつらい、うまくいかない……と悩むママたちのお話をじっくり聞かせていただくと、根本的な原因は夫婦関係にあることも多いように思います。ご主人との関係に何らかの不満や問題を抱えていて、それが子育ての悩みとして表面化するケースもよくあります。
夫婦の会話を点検しましょう
子供が生まれると、それまでの夫婦としての関係性は大きく変化します。家族の新メンバーである子供にばかり注目してしまい、夫婦共にパートナーに興味や関心が持てなくなることもあるようです。流行のアイドルグループに例えるなら、それまではお互いの視界のセンターにいたはずのパートナーが研究生に降格してしまう。視界の端の方で、パートナーが動いているのはちらりと見えるけれど、やっぱり注目するのは新しくセンターになったわが子のこと。そんなご夫婦も多いのではないでしょうか。
最近、夫婦でどんな会話をしましたか?
「今日は残業だから帰りは遅くなる。夕飯はいらないよ」
「夏休みの旅行、この宿にしようと思うんだけどいいかしら」
「美容院に行きたいから、今度の日曜日は子供と留守番してくれない?」
こんなふうに、業務連絡のような会話が多くなっていませんか? 「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」といわれるこのような会話は、仕事を円滑に進めるためには欠かせないもの。もちろん家庭を円滑に運営していくためにも必要なものではありますが、 家庭は職場ではありませんから業務連絡だけでは味気ないですよね。
では恋人同士だったころ、そして新婚時代、子供が生まれる前の二人は、どんな会話をしていたでしょうか。思い出してみてください。
「一緒に観た映画、感動したなぁ。あのシーン、どう思った?」「仕事でミスしちゃって、ちょっと落ち込んでるの。話を聞いてくれない?」「このイベント、面白そうだと思わない? 行ってみたいのだけど、あなたは?」
こんなふうに、自分の気持ちを伝えたり相手の気持ちを受け取ったり、感情を共有(シェア)するような会話も多くしていたはずです。この連載でも取り上げてきたように、私たち人間は、自分の感情をそのまま認めて(見・留めて)もらいたい生き物。子供だけではなく大人だって、みんな身近な人に自分の気持ちを受け止めてもらうとうれしいのです。
日本人の男性は自分の感情をオープンにすることに慣れていない人も多いもの。ビジネスの場では感情を抜きにして冷静沈着に話をすることが求められますし、「男は、寂しい・悲しいなどの弱音を吐くものではない」という価値観の中で育った人もいるでしょう。それでもやはり、パートナーや身近な人には素直な感情を伝えることができたら、それは得難い経験になるはずです。
夫婦の時間を大切に
わが家も、帰宅の遅い夫と講座で日本全国を飛び回っている私との共働きなので、夫婦でゆっくり話をする時間はあまりありません。でも帰宅した夫の顔を見て「今日は時間をとった方がよさそうだな」と思うときは、できるだけ同じテーブルについて落ち着いて話を聴くようにしています。すると、めったに弱音を吐かない夫の本音が聞けたりすることも。夫が話してくれると私もうれしいですし、きっと夫も話せたことがうれしいのだと思います。
私の一人息子も、もう中学三年生。赤ちゃんのころは二十四時間ずっと一緒だったはずなのに、今となっては部活や友達との約束で忙しく、土日も家にいることはほとんどありません。休日も夫と二人で過ごすことが増えました。
皆さんも今は子育てに忙しく、ご主人に向き合う時間などないかもしれません。でもいつか再び、パートナーがあなたの視界のセンターに立つ日が来るのです。夫婦だけの時間は、思ったよりも早くやってきます。子供はあっという間に大きくなって、そして夫婦二人になってからの時間はその先もずっと長く続くのです。
夫婦二人の暮らしになったとき、会話がなかったら寂しいと思いませんか? 自分の気持ちを伝えること、相手の気持ちを受け取ること。それが自然にできている夫婦はきっと、年を取って二人だけの暮らしになっても楽しく時間を重ねていけるはず。そんな夫婦を目指して、子供が小さい今のうちから、ぜひ意識して夫婦で感情のシェアをする習慣を付けておきましょう。
【山﨑洋実(やまさきひろみ)】
HAPPY MOMMY プロデューサー&コーチ。「Fine-Coaching」主宰。結婚後にコーチングを体系的に学び、自身の妊娠出産を経て、「ママのイキイキ応援プログラム(通称:ママイキ)」をスタート。ママ向けコーチングの第一人者として「ひろっしゅコーチ」の愛称で親しまれ、全国の悩めるママたちにアドバイスを送っている。