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状況を「数字」で表現する

金山 元春高知大学准教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


私たちは困難な状況に陥ると、まるで出口のないトンネルの中にいるように、そうした状況がいつまでも続くかのように感じてしまうときがあります。

たとえば、長期にわたって〝登校渋り〟の状態にあるAちゃんがいるとします。Aちゃんの母親は「昨日は学校へ行ったのに、今日は行きませんでした。明日は学校へ行くのかどうか、心配でしようがないです……」と、わが子が学校へ行くか行かないかで、一喜一憂する不安な毎日を過ごしています。

しかし、登校の有無とは別に、Aちゃんの毎日は変化に満ちているはずです。気づかないかもしれませんが、毎日の生活の中では、母親が少しでも安心できるような出来事も生じているはずなのです。

そうした変化に気づくための工夫として、状況を「数字」で表現してもらうという方法があります。この例でいえば、次のように尋ねます。
「お母さんが、心配で心配でどうしようもないというのを1、まあなんとか安心して過ごせるようになってきたかなというのを10とすると、いまは、いくつくらいでしょうか?」

これに「4くらいでしょうか」との答えが返ってきたとしたら、その「4」という数字の内容に関心を持って、次のような対話を続けます。
「4まで安心できるようになったのは、どんなことからですか?」
「そうですね……。最近、何げない会話を楽しめるようになってきたことからでしょうか」
「それは何か、きっかけがあったのですか?」
「はい。以前は、口を開けば学校の話ばかりでしたけれど、そうするとかえってAは塞ぎ込んでしまうので、少なくとも私と一緒にいるときは楽しく過ごせたらいいかなって……。最近は、あの子の好きな音楽の話などをするようにしています」
「そうですか。お母さんのそうした心配りのおかげで、Aちゃんにとって安心できる楽しい時間が増えているんですね。ほかに何か思いつくことはありますか?」

このような対話を続けているうちに、母親はAちゃんと安心できる時間を過ごせていることを思い出し、また、そこにある自分なりの対処や工夫に気づくことができるでしょう。見逃しがちな変化も、数字にすることで捉えやすくなります。

数字を取り上げる際には、10のうち6足りないという発想ではなく、何があって4なのかというところに関心を持ってください。また、その数字分の良い変化が見つかったら、この例のように、その〝お手柄〟をその人に返すような対話を心がけましょう。

こうした対話を続けた後に、「4に1だけ増えて5になったときは、Aちゃんとどんなふうに過ごしていると思いますか?」と未来の姿を思い描くことで、これから何をすればいいのかという、ヒントを得ることができます。

ここでは、1だけ増えた未来の姿を描くのがコツです。そうした小さな変化が、〝さざ波〟のように大きな変化へとつながっていくのです。

天理時報2018年11月18日号掲載