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大学選手権決勝の舞台裏を語る トークイベント
-天理大ラグビー部・小松節夫監督-

天理大学ラグビー部監督の小松節夫氏を迎えてのトークイベントが、先ごろ大阪市内のニュージーランドレストランで行われた。司会は、『ハルのゆく道』(道友社刊)の著者でラグビージャーナリストの村上晃一氏。「天理ラグビーの真髄について」をテーマに、大学選手権決勝の舞台裏やチームの成長過程などが紹介された。

――まずは、大学選手権決勝戦について。ずばり敗因は?

やはり〝完全アウェー〟というか、私自身も経験したことのないような異様な雰囲気でしたね。準決勝の帝京大戦も同じくらいの観客数でしたが、そのときはどちらかといえば、天理を応援してくれていたかもしれません。スタンドの周囲から降ってくるような大歓声は、選手にとっても相当なプレッシャーだったと思います。
 

――試合後、「自分が甘かった」と話していましたが。

勝負に対する厳しさですね。大学選手権に入ってチームの調子が良かったので、準決勝から決勝までの間に「けが人を出さないこと」「チームコンディションを下げないこと」を意識していた。このままうちの力を出せば勝てるだろうと思い、もっと厳しく、とはならなかった。

逆に、明治大は「このままではいけない」と危機感を持って決勝に臨んだのではないかと思います。
それがディフェンス面に出ていた。それまで明治大は1対1のタックルだったのが、決勝では1対2で止めに来た。こちらが力ずくで前に出ようとしてもボールは進まず、それを繰り返すうちに、精神面でも追い込まれたように思います。

――試合終盤の島根一磨キャプテンの活躍はすごかったですね。

あんな姿は初めて見ました。彼は地味なプレーが信条で、重要な場面では起点をつくってくれる良いキャプテンです。

でも決勝では、とにかくボールを追いかけてひたすら走っていた。それが、味方からパスをもらってトライを決めるという結果につながった。彼の頑張りで、あのような接戦ができたかなと思います。

帝京戦勝利の要因

――ところで、王者の帝京大に勝った話を聞かせてください。

あの試合は出来過ぎでした。練習試合を含め、一度も勝ったことがない相手だっただけに、帝京大を倒さずして日本一にはなれないと、みんな気合が入っていました。

7年前の立川理道キャプテン時代に決勝で対戦したとき、フィジカルは完全に負けていました。あのときの戦い方は、フォワードはとにかく我慢して、バックスで点を取るというスタイルでしたが、あの試合の教訓から、フィジカルやスクラムの重要性を強く意識するようになりました。

–スクラムが強くなりましたね。強化のためにやったことは。

ウエートトレーニングで体づくりをすることと、ひたすらスクラムを組むことです。
全寮制になり、選手の栄養管理ができるようになって、朝練(早朝練習)を始めたのも大きいですね。

–決勝直後、明治のチームが集合写真を撮っている様子を、天理の選手たちがじっと見つめていた姿が印象的でした。

実は私自身、7年前の決勝戦直後の記憶がないんです。それくらい、試合に負けた悔しさで周囲が見えていませんでした。

でも今回は、少し考える余裕があった。優勝した明治大は、昨年の決勝戦を1点差で負けた。帝京大も、9連覇する前は早稲田大に決勝で負けて悔しい思いをした。両チームとも、そこから優勝への新たな挑戦が始まっている。ここは、相手チームの喜ぶ姿を目に焼きつけさせたいと思い、見るように言ったのです。

今回、頂点に立てなかった原因を考えると、うちのチームに足りなかったものは「経験」だったと思う。
この貴重な経験を生かして、次こそ日本一をつかみたいと、思いを新たにしています。

天理時報天理時報2月17日号 掲載