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〝気持ち〟の抱え方を学ぶ

金山 元春高知大学准教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


発達心理学では、個人差はあるものの、人の心には多くの人に共通して見られる発達の道筋があり、各時期の特徴を踏まえた関わりによって、人の心は健全に育まれていくと考えられています。そこで、これから数回は各時期の主な特徴についてお伝えしていきます。それぞれの時期における関わり方の参考にしてください。
乳児期は〝信頼の心〟を育むことが大切です。赤ちゃんが泣いたときには、「あら~」と優しい声をかけながら、「お腹がすいたのかなあ?」と授乳したり、「お尻が濡れちゃったのかしら」とオムツを替えたりしますね。そして、赤ちゃんがうれしそうな顔をすれば「は~い、気持ちよくなったねえ」と一緒にニコニコするでしょう。

このように、赤ちゃんからのサインを敏感に感じ取って応答するという関わりを続けることで、赤ちゃんは「自分は大切な存在なんだ」という〝自己信頼感〟と、「周りの人は自分を守ってくれる存在なんだ」という〝他者信頼感〟を育んでいきます。この時期の経験が、人生のすべてを決定するわけではありませんが、信頼関係に基づく養育環境が、健全な心の発達にとって重要であることは間違いありません。
また、乳児期から幼児期にかけては、子供が感じる不安、恐怖、悲しみ、怒りなどといった〝嫌な気持ち〟も大切にしてやってください。
子供と一緒に喜んだり、楽しんだりするのは分かるけれど、嫌な気持ちを大切にするとは、どういう意味だろう  と疑問に思うかもしれませんね。

私たちは、嫌な気持ちは、あってはいけないものだと思いがちです。でも、不安や恐怖、悲しみや怒りを感じない人生なんてあり得るでしょうか? こうした気持ちは、あって当然なのです。
だからこそ私たちは、嫌な気持ちに振り回されて体調を崩したり、自分や他者を傷つけるような行動を起こしてしまったりすることがないように、嫌な気持ちの抱え方を学んでおく必要があります。乳幼児期は、その基盤をつくる大切な時期なのです。
たとえば、子供が何かに怯えていると「怖くないでしょ!」と叱咤激励する人がいます。時には、転んだ子に「痛くないでしょ!」と声をかける人も見かけます。しかしこれでは、子供が怖さや痛みの抱え方を学ぶ機会を奪うことにもなりかねません。

このような場合は、「怖いねえ」「痛いねえ」と、その子が感じているだろう気持ちを言葉にしてください。そして「パパが一緒にいるから大丈夫だよ」などと優しく触れてやればいいでしょう。
「怖くない(痛くない)」ではなく、「怖くても(痛くても)大丈夫」というような体験を重ねることで、人は怖さや痛みを抱えられるようになるのです。

天理時報2019年3月24日号掲載