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vol.18 「感情」を認め「行動」を促す

金山 元春天理大学教授
本部直属淀分教会淀高知布教所長


幼児期には、高い所に上ってみたり、押し入れの物をすべて引っ張り出してみたりと、未知の世界に興味を示すようになります。大人から見ると他愛もないことでも、その子にとっては大冒険です。こうした体験が「自分でできる!」という〝自律の心〟を育んでいきます。
何かに触れたり何かを始めたりする前には、信頼している大人の顔をちらりと見ることがあります。これは、安全を確認しているのです。自分の安全を保障してくれる人が目に入る範囲でなら、冒険できるのが幼児期前期の特徴です。優しく見守りましょう。
これが幼児期後期になると、信頼している大人が側にいなくても大丈夫になります。養育体験の中で「自分は守られている」という感覚が十分に満たされていれば、その感覚に支えられて物理的に離れられるようになるのです。冒険する世界が広がり、体験も豊富になって、心の発達が一層促されていきます。
また、この時期は「これがしたい!」「これはしたくない!」という〝自発の心〟が強くなります。いわゆる反抗期です。どの程度まで自分を打ち出して、どの程度まで自分を抑えるのか  。そのバランスを取ることは大人にも求められる力ですが、幼児期は、その基礎を培う時期なのです。
そう考えれば、やっかいな反抗期に対して、単なるわがままと捉えるのではなく、発達上の意義を見いだせるのではないでしょうか。
たとえば、こんな状況を想像してください。

あなたはAちゃんと公園で遊んでいます。あなたが「もう帰るよ」と声をかけると、Aちゃんは「いやだ、まだ遊びたい!」と、ぐずります。そんなときに「いやだ、じゃないでしょ! ほら早くして!」などと急かすと、かえって激しく駄々をこねることがあります。こうなると仕方がないので「もう、わがまま言って! あとちょっとだけよ」と妥協してしまうこともあるでしょう。これでは、我慢する力は身に付きません。
前回お伝えしたように、人生において、不快な感情は避けようがありません。だからこそ、人は不快な感情の抱え方を学ぶ必要があるのです。
そのためには、「感情」は否定せずに認めましょう。その一方で、身に付けるべき「行動」に関しては、しっかりと取り組ませます。これは先の例とは正反対の対応です。
具体的には、まず「いやだよね、もっと遊んでいたいよね」と、子供の「感情」を認める言葉を伝えます。次に、「約束した時間だから帰るよ」などと理由を伝えながら、望ましい「行動」を淡々と促します。そして、おもちゃを片づけ始めるなど、それらしい行動が少しでも見られたら、すかさず「そうだね、お片づけが済んだら一緒に帰ろうね」と褒めましょう。
大人からすると、根気がいりますが、子供が我慢する力を身に付けるための練習の機会と捉えて、付き合ってください。

天理時報2019年4月22日号掲載