感謝の心で夢の舞台へ
「チアで勇気与えたい」
吉田 奈央

アメリカンフットボールの最高峰NFL。今春、強豪チームの一つ「ミネソタ・バイキングス」の専属プロチアリーダーに合格した。今月渡米し、チーム初の日本人チアリーダーとして活動する。
チアの楽しさを知ったのは高校時代。甲子園に出場した野球部の応援に行った際、その魅力にふれ、進学した関西大学でチアリーダー部へ。同大アメフト部の大学選手権優勝時も間近で応援した。
そんなある日、インターネットでNFLのチアの映像を見て、衝撃を受けた。
「ダンスのレベルが高いことはもちろん、女性としての華やかさや強さを感じた。私もここで踊ってみたい」――。
大学卒業後、恩師の誘いで和歌山のプロバスケットボールチームの専属チアに。技術を磨きつつ、プロの心構えを学んだ。
「ファンの方が試合を見に来てくれなければ、自分の仕事はない。単に元気で明るければいいわけじゃない」。踊れることに感謝し、ファンと選手を結ぶ〝懸け橋〟役を目指すようになった。
チームで2年間活動し、気づいたことがある。「小学1年生から参加した教会の鼓笛隊では、練習へ行くと、いつも皆が互いに『ありがとう』と口にしていた。誰彼なく教わった感謝の心が、プロとして一番大切なことだった」。
米国では、チアリーダーは「女性のロールモデル(お手本)」とも呼ばれる。2カ月間に及ぶオーディションでは、ダンスの技術はもとより、人間性も重要視される。チームによっては数十倍にもなる高倍率の中で、吉田さんは鼓笛で培った経験をアピールし、夢の舞台を勝ち取った。
「合格後、多くの人から『自分も頑張ろうと思った』と声をかけてもらった。舞台は変わっても、誰かに勇気を与えられるようなチアを目指したい」。そう言って、微笑んだ。
天理時報2015年6月21日号掲載