「本当に良い物」届けて縁をつないでいきたい
山口 輝陽志

2008年、父・道雄さん(67歳・撫養大教会ようぼく)が経営していた縫製会社を譲り受けて、オリジナルブランド「NALUTO TRUNKS」を立ち上げた。
3代続く縫製工場。子供用水着などの生産を代々請け負ってきたが、安価な外国製に押され、当時の経営は危機的状況だった。
打開策となったのが、サーフィンをする際に履くサーフトランクス。自身も学生時代から鳴門の海でサーフィンに親しんできた。「既製のトランクスには気に入るデザインがなくて。じゃあ、自分で作ってしまおうと」
インターネットで販売したところ、「デザインがいい」「履き心地が抜群」と、サーファーたちの間で口コミで広まり、俳優やタレントも愛用する人気ブランドに。有名セレクトショップから声がかかり、7月にはニューヨークで展示会を開いた。
コットン100%の生地を表面に、水着に使われる生地を裏地に使う縫製作業は、道雄さんや熟練社員ら5人ほどで行う。生地が伸び縮みする水着の加工には、特殊な機械と技術が必要で、そこには代々培ってきた伝統が息づく。
価格は一般的なサーフトランクスの約2倍に設定した。「初めは笑われた」と振り返るが、品質の劣る製品を安く大量に生産し、使い捨てられる社会のあり方に疑問を感じてきた。「手を抜かず、心を込めて作ったものを、『良い』と言ってくださる人に買ってもらいたい。製品を通して、作り手と買い手が共に幸せになれなければ、ものづくりの意味はないと思う」
「Life Is Doughnut」と書いたワッペンがトレードマーク。「社員、お客さん、取引先。すべて親神様に結んでいただく縁。仕事を受け継いでいけるのは、それが輪のようにつながっていくから。〝幸せのドーナツ〟を大きくしていきたい」
天理時報2015年8月23日号掲載