恩師の言葉で挫折越え 世界の〝激流〟へ漕ぎ出す
大森 望

ラフトと呼ばれるボートで、激流を下るタイムや正確さを競うラフティング。女子日本代表チーム「THE RIVER FACE」に所属する大森さんは、いま注目されるアスリートの一人だ。
天理高校卒業後、大阪国際大学で友人に誘われ、初めてパドル(櫂)を手にした。すぐに頭角を現し、1年後には現在のチームへ。昨年11月、UAEで行われた世界選手権で、チームの総合3位入賞に貢献した。
「まだまだパワーが足りない」
日本最大級の激流と呼ばれる吉野川が練習場。日中はラフティング体験客のガイドを務めつつ、週6日、朝5時から練習に明け暮れる日々だ。
いまではチームに欠かせない存在となっている大森さん。しかし、「ある時期、チームから離れたいとずっと思っていた」と打ち明ける。
選手の連帯感が何よりも求められるスポーツ。一つのミスが命に関わることもある。チームメートと近くありたいと思う〝心の距離〟が、逆にすれ違いを生んでいた。
そんなとき声をかけたのが、大森さんが恩師と仰ぐ元プロ選手の先輩だった。
「自分が変わらないと、周りは変わらない。避けるのではなく、向き合わなければ成長はないよ」
ラフト上での何げないしぐさや言葉づかい、メンバーとのやりとりなどを見て、かけられた言葉だった。「そんなところまで見てくれていたんだ――」。驚きとともに、「自分の理解者がいる」と実感した。
10月の世界選手権まで残り3カ月。メンバー選考には落選したが、「チームの一員として、やることは変わらない」と、きっぱり言う。
「いまは、漕ぐことそのものが楽しい。世界の頂点に立つために、チームの役に立ちたい」
大森さんが帯同するTHE RIVER FACEは、7年ぶりの世界一を目指す。
天理時報2017年5月28日号掲載