常に「一からのスタート」 祖母の教えを心の支えに
石戸 与恵

「英語も堪能ではないし、器用でもない。この仕事を続けてこられたのは、周囲の支えはもとより、ある言葉があったから」
東京・霞が関。外務省に入省し、今年で10年になる。これまで、邦人テロ対策室や在英国日本大使館など、さまざまな国や部署での仕事を経験してきた。
「いつか、海外で働きたい」
高校生のころ、そんな思いを抱いて天理大学へ進んだ。卒業後、在外公館派遣員として、在タイ日本大使館へ。「仕事はいわゆる〝縁の下の力持ち〟。こなすだけで精いっぱいだった」
その後、本省へ。外務省では一つの部署で3年ほど勤めると異動するのが通例だ。実績を積んでも、新たな部署では〝新入り〟からのスタートになる。
「辞めたい……」。慣れない環境や仕事。頭の中で、いつもそうつぶやいていた。そんな心を支えたのは、所属教会の会長を務める祖母・永田恒子さんが、いつも口にしていた「おさしづ」の一節だった。
「これがいかんと言えば、はいと言え。これより這い上がる道は無い」(明治29年4月21日)
「決して卑屈になるのではなく、目線は上を向いている。祖母は、海外にまで毎月手紙を送って、『先案じをしてはだめ』『教祖にもたれて通りなさい』と伝え続けてくれた」
2013年、北アイルランドで行われたG8サミット。政府専用機の運行に携わった。準備を含め、怒涛の日々だったが、なんとか無事に終えることができた。「肝心なところで、ぐっと踏ん張って、泥くさくても前に進む。祖母の言葉が、その力をくれた」
今年5月、育児休暇中に修養科を修了し、復職。日本の発信拠点を設置する「戦略的対外発信拠点室」に配属された。「また、一からのスタート。不安もあるけれど、祖母の教えを胸に『はい』と言って、頑張ってみようと思います」
天理時報2016年11月20日号掲載